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読書備忘録です。

政治改革再考/待鳥聡史

平成を通じて行われた選挙制度、行政、日銀・大蔵省、司法制度、地方分権に及ぶ広範かつ大規模な政治改革は、憲法に規定される公共部門のあり方を転換する明治、戦後に次ぐ第三の憲法体制を作り出したと評価しうるもの。

このような改革の背景には、80年代に頂点を迎えた戦後日本の経済的繁栄や社会的安定が行き詰まりを見せていたことがある(平成デモクラシー論)。さらに根本的には、個人が自律的に合理的に責任を持って判断し行動すること、それによって社会の合意形成や進め方が合理化することが望ましいとする近代主義(近代主義右派※)の理念があった。

このような共通理念はあったが、改革の各領域において具体的な制度改革が進められる過程では、近代化理念をその領域固有の課題認識との整合化が図られる必要(土着化)があり、領域ごとに異なった志向性を帯びることとなった。(選挙制度行政改革=集権的意思決定メカニズムを目指す。一方、日銀、地方分権改革=領域の自立性の強化)

異なった志向性は、改革が着手されなかった領域(参議院など)の問題とも相まって、マルチレベルでの不整合を生み、予期し得ない結果を生み、あるいは期待した成果を生まなかったという面がある。

※戦前の親英米派、オールドリベラリスト 吉田茂の系譜