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読書備忘録です。

AI監獄ウイグル/ジェフリー・ケイン

原題は、「完全警察国家」で、副題を含めてAIという文字もウイグルという文字もないが、このタイトルの方が分かりやすい。

中国では特に新疆ウイグル自治区で恐るべき監視網が構築されている。これには顔認証などAI、最先端技術が用いられているが、その技術開発には、スパイ活動もあるが、外国企業が中国市場に参入する際の条件として半導体などの機密情報を提携先中国企業に移転することを求められたといった事情も寄与したようだ。

2011年同時多発テロ以降、14年にかけウイグル人テロリストらのテロが続発、中国はこれをチャンスと捉えて、この地域をディストピア的未来を作る最先端の監視技術の実験場にする。
中国は、ハイテク機器を使い国全体をパノプティコン(一望監視装置)にし、完全な警察国家を作り出した。人々をコントロールする要諦は、人を事実や真実から遮断した上で監視下に置き、ルールを不規則に適用することなど人々を不確かな状況に置くことにあるという。人々は敵味方の区別がつかなくなり、誰も信じられず、被害妄想に囚われるようになると。

メイセムというウイグル人の語る居間にまでカメラが置かれる監視システム、収容所での洗脳など、人権侵害の実際は本当に恐ろしい。

一体どうすればこの状態を止めることができるのかを考えると絶望的な気持ちになる。開発独裁が経済の発展をもたらすこともあるだろうが、権威主義体制がこのようなディストピアを生んだ時、それへの抵抗がテロや内紛となって人々が更に悲惨な状況に追い込まれるのを繰り返し見ることとなるのはたまらない。新疆綿の不買などもいいが、根本的な解決には遠く、経済制裁もなかなか効かないだろう。効いて体制が変わったとしても、その後の平和な社会、自由な社会が保障されるわけでもない。

日本はもう少し難民認定について考えた方がいいなどとも思う。