HONMEMO

読書備忘録です。

田中耕太郎/牧原出

東京帝国大学法学部長、文部大臣、参議院文教委員長、最高裁判所長官国際司法裁判所判事を歴任した田中耕太郎の人物評伝。

田中は、論敵を強烈に批判し、明快に自らの価値に基づく意見を主張しつつ、状況に応じた対応をする。このことによって組織内で反対意見との真摯な調停が身に見える形で進む。このような田中の人格が、戦後司法の独立はじめ、田中の関わった制度の独立確立に大きな役割を果たした。

共産主義、反復古主義の論陣を張り、法廷闘争やマスコミの裁判批判を「雑音」と呼ぶ。また、政治化、裁判批判が激化する中での松川事件では一貫して請求棄却を主張、砂川事件では統治行為論により判断を避け、反動と批判されるが、田中により司法の独立が確立されたと。