アマゾン奥地の少数民族ピダハンの人びとは、よく笑い、あまり働かず、性的に大らかで、将来のことを思い煩わず(「心配する」という語彙もない。)、精霊と一緒に暮らしていて、充足しているから他の世界に関心が薄い。また、(同時代に生きる誰かが)直接に体験したこと以外は話さない、だから民族の伝承、神話というものを持たないし、神はいない。
ピダハンの言語は、これまでのチョムスキーによる言語学の定説を覆すようなものらしい。リカージョン(複文のことだろう。)を持たないというのが、大変なことのようなのだが、言語学の素人にはよくわからない。ただ、音素がすごく少なくて(その代わり声調がある)、そのために単語が長くなるとか、数や色を示す言葉がないとか、興味深いことこの上ない。
著者は、ピダハンへの宣教(聖書の翻訳)のために現地でピダハンと共に暮らすのだが、その影響で無神論者になってしまう。西洋文明は、ピダハンとは対極にある感じだから、もともと無神論あるいは汎神論的なメンタリティをもっている日本人に比べて衝撃度は強いかもしれない。日本人でもびっくりするけど。
- 作者: ダニエル・L・エヴェレット,屋代通子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: 単行本
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