HONMEMO

読書備忘録です。

2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

あったかもしれない日本/橋爪紳也

幻に終わった戦前の万博や東京オリンピックなどのプロジェクト、大東亜建築様式といったものの構想、様々なコンペに敗れた設計案などが多くの図版とともに取り上げられている。ずい分前になるけれど、結構書評などで取り上げられていて面白そうだと思ってい…

陛下/久世光彦

これはすごくいい、こういう小説をまさにロマンというべきにやあらん。時代はニ・ニ六事件前夜。青年将校剣持梓の陛下に対する恋情・・・。義眼の裏に御真影を貼る北一輝*1との交流。正気を失った姉遊子との近親相姦的な妖しい関係。そして梓の子を宿す哀しい…

自然科学研究機構シンポジウム

「爆発する光科学の世界〜量子から生命体まで」という自然科学研究機構のシンポを見てきた。プログラムコーディネーターが立花隆ということもあってか、なかなか盛況。立花隆が同機構誕生時に、そのなんとか委員になっているそうで、機構の研究内容を一般に…

日暮硯

信州松代藩家老恩田木工の藩財政建て直しの事跡を綴ったもの。「経綸の書として含蓄深き書」と帯にある。 自ら清貧を誓い、先納、督促等の課税の仕方を公正にするなどなど、百姓の信頼を得るやり方をしたということは良く分るけれど、250年も語り継がれる…

彷徨の季節の中で/辻井喬

堤清二と辻井喬という名前が同一人物のものだということを知ったのは、つい最近のことで、氏が「8月15日と南原繁を語る会」の講演者の一人であったことによる。本書は、辻井喬が書いた堤清二の自伝的小説。衆議院議長も務めた西武グループの創業者である…

華岡青洲の妻/有吉佐和子

全身麻酔による手術を世界に先駆けて行った華岡青洲。その母と妻が自ら麻酔薬の実験台となったという美談に隠された嫁と姑の確執を描く。外からは仲の良い嫁姑に見えて、実際はどろどろというのが何とも恐ろしいというか何というか・・・。小姑だけはそれに…

孤高の人/新田次郎

日本登山界パイオニアの一人「単独行の加藤文太郎」をモデルとした小説。生真面目一方で、人付き合いができず、ヒマラヤ行きの夢を持って孤独に登山訓練を重ねる男加藤は、結婚を契機として「孤独」から解放されようとしたまさにそのとき、やむを得ず初めて…

考える人/坪内祐三

先頃、おそらく発売直後だったためだろう、地味な本なのに渋谷の大規模書店で大きく展開されていて、衝動買い。 雑誌「考える人」に連載された「考える人」16人の考えを考えた本。考え考え読む。 16人とは、小林秀雄、田中小実昌、中野重治、武田百合子、…

十九歳の地図/中上健次

数年前に「岬」を読んで、たぶんこの作者の本はもう読まないだろうと思っていたのだが、どういう引力に引かれてか・・・。処女作「一番はじめの出来事」など4つの短編集。繰り返される異父兄自殺などのモチーフ、貧しい、鬱屈した新宮の家族、生活。優れた作…

ドゥマゴ文学賞など

4日、今年のドゥマゴ文学賞は、平松洋子「買えない味」と発表。今年の選者は、山田詠美。その選評などはここ。山田詠美ってやはりうまい。受賞作を読んでみたいと思わせるもの。一方、山田詠美が「世にも美しい」として引用している平松洋子の文章は、美しい…

キリング・フィールド

NHKBS2にて。20年も前になるか、ビデオで見て以来。カンボジア内戦というか、クメール・ルージュの恐ろしさ。ベトナム戦争もそうだけれど、カンボジア内戦になると一層複雑怪奇で、未だに何がなにやら良くわからなくなる。この映画のイメージだけが鮮烈なのだ…

春琴抄/谷崎潤一郎

映画化されたりもしていて*1、ストーリーを知っていることなどもあって、読まないできたのだが、最近、明治から戦前くらいまでの小説を少し読んでみようという気分があって、読んでみた。 甘やかされて育った、いや〜なというか悪女そのものといった性格の、…

五重塔/幸田露伴

このリズムは、講談か噺か、何とも小気味良い。義理と人情と、「魔性のものに憑かれた職人の姿」を浮き彫りにする良質のエンターテインメントだ。明治25年の作。 最近になって気になりだした明治の小説が、鏡花、本書と、なかなか面白い。はまりそうだ。 五…

NHKBS「東大と日本が生まれ変わった日〜南原繁の言葉を考える〜」

TV

行きたかったけれど行けなかった「8月15日と南原繁を考える会」*1の模様が(ダイジェストで)放映された。 講演者は、以下のとおり。 評論家・東京大学特任教授 立花隆(コーディネーター) 免疫学者・日本学士院会員 石坂公成 医学者・東京大学名誉教授 …

抱擁家族/小島信夫

江藤淳が絶賛し、従って*1福田和也が賞賛しているということで、読んでみた。茂木健一郎がそのブログで、本書について、文字の裏に魑魅魍魎が蠢いているみたいなことを書いていた記憶がある。主人公俊介、時子の感情の、何と言ったらいいのか、ヒリヒリした感…