HONMEMO

読書備忘録です。

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

地図と拳/小林哲

冒頭から満洲を舞台にした謀略ものかと思って読んだが、主人公の一人細川は間諜風ではあるものの、謀略ものの駆け引きの面白さで読ませる本ではなく、ドキドキさせてもらえなかった。 著者の東大での指導教官だったらしい松浦寿輝の上海を舞台とした「名誉と…

世界は五反田からはじまった/星野博美

著者の曽祖父の代からの'ファミリーヒストリー'を、また大(greater)五反田の歴史を、祖父の手記や関係者への取材、文献調査などによって、丁寧に、きめ細かく描く。大五反田は、正田家のあった高台の御屋敷町と川沿い・低地の工場街が近接する地域であり、工…

硝子戸の中/夏目漱石

読む本がなくなって、Kindleで知財切れの短いものを漁って。「硝子戸の中」ってエッセイだったのか。 39の短い文章からなっていて、繋ぎ合わせると漱石晩年の「吾輩は猫である」みたいな趣もある。幼少期の回想なども興味深い。 最後、漱石は、振り返って、…

まっとうな政治を求めて/マイケル・ウォルツァー

著者はコミュニタリアン。現在の政治状況における「形容詞としてのリベラル」の重要性を説く。(保守とリベラルというような名詞でなく、)新しいポピュリズムと闘うリベラルな民主主義者、権威主義に反対するリベラルな社会主義者、反ムスリム等排外主義的ナ…

資本主義と闘った男/佐々木実

宇沢弘文の評伝だが、その事績を詳細にたどることで、世界の経済学の潮流の盛衰記にもなっている。 著者には、宇沢とは思想的にも人間的にも対極と言ってよい竹中平蔵の評伝(大宅賞受賞)がある。 竹中が政権中枢に入ってその考え方で日本経済を動かす一方、…