HONMEMO

読書備忘録です。

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

アジアおいしい話/平松洋子

昨年のドゥマゴ文学賞*1を受賞したということで名前だけ知っていたのだが、新古書店で著者の名前を見つけて、言ってみれば衝動買い。受賞作「買えない味」について山田詠美が紹介していた文章みたいに妙に気取った感じでもなく、普通に面白く読めた。 アジア…

希望格差社会/山田昌弘

2年と少し前のベストセラーの文庫化ということで、今更ながらではあるが読んでみた。 「リスク化」と「二極化」をキーワードに、経済面、家庭面、教育面と幅広い観点から現状を分析していて、説得力がある。若者の「不良債権化」という言葉に背筋が寒くなっ…

醜い日本の私/中島義道

「うるさい日本の私 (新潮文庫)」の延長線上にあるお話。 なぜ多くの日本人は、「頭上に電線がとぐろを巻き、原色の看板でびっしり埋め尽くされ、スピーカーががなりたてる商店街の光景」を醜いと思わないのか、あるいは不快に感じないのか。フライトアテン…

きらきらひかる/江國香織

江国香織をなんと初めて読む。 ホモの夫とアル中の妻というドロドロ必死の設定で、エピソード自体はまあなかなか大変なものではあるのだが、きらきらひかるガラス細工のような笑子を中心に、ひとびとがすっきりと都会的雰囲気の中に語られていて、不思議な感…

あの戦争は何だったのか/保阪正康

副題に「大人のための歴史教科書」とあるけれど、大人にはあまり役に立たない。中学・高校生向き、かな。 新潮新書らしい半端な本。 あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)作者: 保阪正康出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/07メディ…

文学部唯野教授/筒井康隆

今更ながらに面白く読む。文庫になったらなどと思っていて読みそびれ、10年以上も経ってしまうというのはしょっちゅうあることだが、この本もそんな一冊。 文学の世界に限らず、マスコミに出だすと大学では出世しないというのはよく聞く話だが、ちと事柄は異…

中国の大盗賊・完全版/高島俊男

取り上げられる大盗賊は、陳勝、劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全、毛沢東。 毛沢東の章のタイトルは「これぞキワメツケ最後の盗賊皇帝」とあって、毛沢東は、マルクス主義革命家というより(そんなものではなく)、中国の大盗賊(皇帝)の系譜で捉えるほうがぴ…

城山三郎さん逝去

城山三郎が亡くなった。広田弘毅の生涯を描いた「落日燃ゆ」を読んで感動したのは30年も昔のことになるのだなあ。城山三郎ってあとは「辛酸」を読んだ気がするけれど、これはまったく覚えていない。総会屋錦城とか読んでみようか。 asahi.com:作家の城山三…

不当逮捕/本田靖春

終戦後なお混沌としていた時代に、昭電疑獄など数々のスクープをものした読売の異能の花形記者立松和博が、検察の派閥争いなどを背景に売春汚職報道記事を名誉棄損とされて逮捕され、社にも捨てられてぼろぼろになって死ぬまでを描くノンフィクション。 著者…

政治ポジションテスト

yahooの政治ポジションテストというのがあって、面白いのは、政党支持者別でみると、共産党、社民党支持者はくっきりと第一象限(大きな政府&リベラル)にはいることと、無党派層は自民党より民主党に近いという感じがあることかな。これは無党派層が民主党…

考えるヒント/小林秀雄

高校生の頃か、「Xへの手紙」だったか何か(それすらよく覚えていないのだが)を読みかけて放り出して以来、読もうと思いながら読まなかった小林秀雄。本書は、その頃思ったほど難解でもなく*1、面白く読んだが、期待していたような「眼が見開かされるような…

イッツ・オンリー・トーク/絲山秋子

「第七障害」を併録。私小説というのではないけれど、氏の公式サイトでプロフィールを見てみるとふ〜むと思ったりするところもある。 キング・クリムゾンかあ。イッツ・オンリー・トーク?エイドリアン・ブリュー?なんだかぴんと来なくてWikiで調べたら、私…

花の歳月/宮城谷昌光

呂太后の君臨する後宮へ入ることとなった、零落して久しい旧名家の娘と奴隷に売られた弟の物語。 私は2編ほどしか読んでいないけれど、宮城谷昌光は、長編小説のイメージがあるが、本書は短いながらしみじみとした良いお話だった。 解説は藤原正彦。絶賛して…

プレーンソング/保坂和志

保坂和志は、随分と昔に「この人の閾」を読んで以来。 「ぼく」の視線や思考を丁寧に辿っていくような文章。登場人物が皆、猫のような自由な感じを持っていて好ましい。 保坂和志公式ページをみてみたら、創作ノートがあって、「不幸や不安の予感のかけらも…

魂がふるえるとき/宮本輝編

宮本輝の編んだ短編集。次の16の短編を収める。 玉、砕ける/開高健 太市/水上勉 不意の出来事/吉行淳之介 片腕/川端康成 蜜柑/永井龍男 鶴のいた庭/堀田善衛 サアカスの馬/安岡章太郎 人妻/井上靖 もの喰う女/武田泰淳 虫のいろいろ/尾崎一雄 幻談/幸田露伴 …

良い映画2本

なかなか良い映画を2本見た。 トランスアメリカ 性同一性障害で女になろうとしている男を演じる女優*1フェリシティ・ハフマンがうまい。うますぎてもらい泣きしそうになる。親子ものにはそれでなくても弱いのだ。本作は父子だか母子だかわからんけど…。 いろ…

人間の悲劇/金子光晴

詩のことはよく分らないのだけれど、金子光晴って「おっとせい」とか「富士」という詩をたまたま知っていて、またそのインパクトがすごく強くて*1、とにかく気になる詩人なのだ。で、備忘のために、ちょこっと抜粋メモ。 恋人よ。 たうとう僕は あなたのうん…

小泉官邸秘録/飯島勲

5年余にわたる小泉政権の事績をかなり幅広く扱っているので、掘り下げ方に不満の残る部分も多い。どこまでが小泉総理の主体的判断で、どこまでが官邸スタッフの事実上の決定の上に形式的に乗っかったものなのかなど、決定に至るプロセスが必ずしも詳述されて…