HONMEMO

読書備忘録です。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

独ソ戦/大木毅

ドイツの対ソ戦は、戦争目的を達成したのちに講和で集結するようなものでなく、人種主義に基づく社会秩序の改変と収奪による植民地帝国の建設を目指す「世界観戦争」であり、かつ(それ故に)敵の生命を組織的に奪っていく「絶滅戦争」であった。また、ドイツ…

傍らにいた人/堀江敏幸

「ひとつの文芸作品を読んで記憶の奥底に刻まれるのは、物語の筋とは一見関わりのなさそうな細部である」と。60を超える作品を連想ゲームのようにして取り上げて、その細部を愛おしむ。そのようにして指摘されないと意識することなく読み飛ばす凡人は、堀江…

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください/井上達夫

-リベラリズムは、寛容と啓蒙の2つの流れから生まれたが、そのそれぞれのポジを統合させる規範的理念が正義。正義がリベラリズムの核心。 -どの正義構想も持つべき正義概念の規範的実質は、「普遍化不可能な差別の排除」にある。これは、反転可能性テストに…

ヘンな日本美術史/山口晃

-鳥獣戯画 4巻の構成の妙で見ると味わい深い。わざとふにゃっとちょろまかすように書くのが日本の絵の特徴。筆致に宿るものに重きがある。 -白描画 字が擬人化され、人が擬デザイン化される。紙の白がそのまま絵画の中の空間になる。白を残して描く印象派に…