HONMEMO

読書備忘録です。

2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

呪われた町/スティーヴン・キング

古典的ストーリーの吸血鬼もの。解説によれば、キング自身、『ドラキュラ』の文学的イミテーションと述べているらしい。異形の者と化した愛する者たちに杭打つむごさに戦慄する。 小野不由美の「屍鬼」は、この作品のオマージュ作品だが、同じ吸血鬼ものなが…

「大岡裁き」の法意識/青木人志

比較法学者によるやさしい法文化、法意識論。朝日新聞の書評サイトでの呉智英の書評に踊らされて、読んでみた。 写真に見る法学者穂積陳重の移り変わりで、明治日本における西洋法の受容の過程を浮かび上がらせる手法は、堅苦しくなりがちな法律を取り巻く議…

航路/コニー・ウィリス

長編エンターテインメントの魅力を満喫。登場人物は類型的な描かれ方なのだけれど、それぞれなかなかに魅力的。アメリカのTVコメディのような展開を楽しく読む。 AをBのメタファーとして描く時に、AはBのメタファーだ、あるいは、AはBのようだと説明し…

目覚めよと人魚は歌う/星野智幸

いろいろと作為に溢れた小説。私のようなそんじょそこらの読者にはとってはなかなか難解。どのように読むかは読者によっていろいろありそう。でも、雰囲気は嫌いじゃない。ちょっと背伸びすれば届きそうだ(笙野頼子「タイムスリップ・コンビナート」とか阿…

野垂れ死に/藤沢秀行

名誉棋聖藤沢秀行の自伝(みたいなもの)。飲む・打つ・買うの三拍子揃った(?)無頼漢としてつとに有名だが、本物のアル中、月20日の競輪場プラス競馬場通い、「中野さん」「江古田さん」という女性との間に子供が4人(?)ってのは凄すぎる。それでいて、…

バーバー吉野

楽しい風刺映画。ビデオで。子供たちとお母さん(もたいまさこ)がいい顔をしている。いい映画なのだけれど、お金を払って映画館で観るかとなるとどうかなぁ(映画ならではのアクション巨編的なもの以外の比較的地味な作品は、もうちょっと安くしてくれない…

錆びる心/桐野夏生

比較的初期の短編集。それ程多くを読んでいるわけではないが、長編の方がずっといい。それぞれ、うまいなぁと思わせるところもたくさんあるし、悪くはないのだけれど・・・。 錆びる心 (文春文庫)作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2000/11メ…

ためらいの倫理学/内田樹

挑発的、断罪的な言葉が溢れる中で、審問的語法で語らない内田のスタンスを好ましく感じる。分らないことを分らないと認め、「自分の愚かさを吟味できる知性」を尊ぶその立ち位置は、信頼に足る。橋本治の立ち位置に似ているように思う。 中でも、戦争論、戦…

蛍川/宮本輝

太宰治賞の「泥の河」、芥川賞の表題作の短編2編。宮本輝に笙野頼子の芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」はわからんだろうななどと前に書いたのだが、実は宮本輝の作品はこれまでに「青が散る (文春文庫 (348‐2))」しか読んだことがなかった。な…

勇気凛凛ルリの色/浅田次郎

浅田次郎は、これまで数作読んで、好きな作家。「地下鉄に乗って」も好きだが、「プリズンホテル」が最高傑作だと思っている(ある意味似たようなモチーフの「王妃の館」はあきれた駄作)。「歩兵の本領」も良かった。このエッセイは、これらの小説(の背景…

世界青春放浪記/ピーター・フランクル

数学者であり、大道芸人である著者の来日前までの自伝。ハンガリーに生まれたユダヤ人ということで、当時の東欧の、あるいは共産圏の生活を、また、ユダヤ人に対する差別というものなどを興味深く読んだ。 「人は見かけによらない」というのは、「通常人は見…

しゃばけ/畠中恵

江戸妖怪もの。かわいらしげなファンタジー。特に印象に残るところなし。それなりに楽しく読んだが。 しゃばけ (新潮文庫)作者: 畠中恵出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2004/03/28メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 125回この商品を含むブログ (466件) を見…

ドグラ・マグラ/夢野久作

心理遺伝だか胎児の夢だか知らんけど、天才科学者なのか狂人なのかが書いたとするくだくだしく、かつ浅薄としか思えない文章を読むのにウンザリして、途中からは斜め読み。私には真っ当な小説の態をなしているとは思えない。久方振りに(曲がりなりにも)通…

[フィクション]パイロットフィッシュ/大崎善生

透明感あふれる文体と惹句にあるのだが、現実感のない(フィクションが持つべきリアリティがないという意味ではなくて)フワフワした文体という感じ。村上春樹の影響が言われるようだが、村上の文体は、鼠とか羊男とかが出てきちゃうような幻想的というか寓…