HONMEMO

読書備忘録です。

2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

貧困大国アメリカ/堤未果

9・11以後のアメリカの新自由主義的政策は、格差を拡大することによって、医療や教育など様々な矛盾を拡大しているし、貧困層のリクルートを容易にして戦争の遂行に利用するという政策目的にもつながっていると。 言いたいことはわかりますが、文章が余りに…

ブッダは、なぜ子を捨てたか/山折哲雄

新書らしくミスリーディングなタイトルで、内容も散漫という印象を否めません。 本書の主張するところは、親に捨てられたといってよいような子供が大量に生み出されている現代において、子を捨てたブッダの生き方を思想を再認識しようというところにあると思…

紅水晶/蜂飼耳

表題作のほか、「崖のにおい」「こぼれ落ちる猿の声」「くらげの庭」「六角形」の計5編からなる短編集です。 いずれの作品も主人公は女性で、鋭敏な感覚で観察したところを綴っているという感じの一種独特の雰囲気を持っています。なるほど詩人の書いた小説…

もののはずみ/堀江敏幸

パリの古道具屋などで出会った小物にまつわるエッセイです。2ページほどの短い文章が小さな写真とともに50ほど。 「もののはずみ」というタイトルは、ちょっとしたしゃれなのでしょうけれど、著者は、『ひとつの「もの」にあれやこれやと情をかけ、過度にな…

未見坂/堀江敏幸

大好きな「雪沼とその周辺」に続く短編集です。以下の9短編。 滑走路へ 苦い手 なつめ球 方向指示 戸の池一丁目 プリン 消毒液 未見坂 トンネルのおじさん この作者の本は、通勤途上とかではなくて、休みの日にゆっくりと読みたくなります。 未見坂作者: 堀…

無防備都市/逢坂剛

禿鷹シリーズの第2弾。第1弾の「禿鷹の夜」を読んだのは10年近く前のことです。ストーリーは全く覚えていませんが、極悪非道の刑事禿富鷹秋の存在感だけは忘れられません。そのキャラが圧倒的で、本書もストーリーなんか読んだ先から忘れてしまいます。 無…

贖罪/イアン・マキューアン

都心のメガ書店のPOPに惹かれて読みました。まだ1月ですけれど、今年読んだ本のベスト3に入ることは間違いなさそうです。 第二次大戦前のイギリスの上・中流社会がゆったりと描かれる中で、主人公の少女ブライオニーが軽はずみに嘘をつくことで幕を閉じる第…

誘拐/本田靖春

吉展ちゃん事件に取材した作品です。 ディテールの書きこみ方が素晴らしく、どんな警察小説よりも面白いです。 被害者サイドよりも、貧困の中で障害を持って育った犯人小原保の心情に寄り添う書き方になっていると言えると思いますが、本書は「被害者」対「…

芥川賞・直木賞

直木賞は、佐々木譲と白石一文ですか。 佐々木譲は、最近久しぶりに読んだ「笑う警官」ががっかりだったし*1、白石一文は昔読んだ「一瞬の光」が全く肌に合わなくて*2二度と読まないだろうと思っている作家なので、なんだかなあという感じではあります。 時…

わらの女/カトリーヌ・アルレー

ミステリーはネタバレになってもいけないので書くのに困るのですが、まあなんとも救いのない、やりきれない物語ではあります。最後にひっくり返って、ちょっとしたカタルシスがあるのかと思ったのですが、とんでもない、悪い男が悪い女を騙す、心理戦の勝利…

逝きし世の面影/渡辺京二

「逝きし世」とは江戸の世の中を指し、幕末から明治にかけて日本を訪れた西洋人の書いた旅行記、日記などをもとに、江戸時代の「文明」の特質を描き出しています。 私はこれまで イザベラ・バード「日本奥地紀行」 アーネスト・サトウ「一外交官の見た明治維…

ニッポンの単身赴任/重松清

単身赴任生活を送っているお父さん、あるいはその妻のルポルタージュです。重松清が書くということで、だいたいの雰囲気はわかってしまうというところがありますが、やはり十人十色ということではありますね。 ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)作者: 重松清…