HONMEMO

読書備忘録です。

2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

秘密結社の手帳/澁澤龍彦

半世紀前に書かれたグノーシス、フリーメーソン、薔薇十字団、ブードゥー教、K.K.K.等々古今東西の様々な性格をもつ秘密結社についての気軽な読み物。おどろおどろしい入社式や密儀などをフムフム言いながら楽しく読んだ。私は占いの類(特にそういうことを…

ITER

同じ文芸春秋にあった立花隆のITER(国際熱核融合実験炉)誘致批判もなかなか面白かった。先端研究は成果が出るかどうかは分らないということがつきまとうもので、成果が出るかどうか分らないからカネをつけるのはおかしいというのは酷。立花は、そうではな…

芥川賞選評

勤め先に置いてあった文芸春秋で芥川賞選評を拾い読み。面白かったのは山田詠美のもの。ユーモラスかつ辛辣。石原慎太郎の「そろそろこの人に受賞させてあげてもいいのではという考え方はおかしい」というのは、ご説ごもっとも。村上龍は、小説が持つべき情…

ドミノ/恩田陸

ドタバタ・コメディー。恩田陸は、比較的初期の作品を2冊読んだことがあるだけだが*1、全く毛色の違う作風で、理屈抜きにブハハと楽しめた。まぁマンガみたいなもんだけど。新作も続々出ているようだし、これからも楽しみな作家。 ドミノ (角川文庫)作者: 恩…

春の数えかた/日高敏隆

著名な動物行動学者によるエッセイ。一流の科学者の書く文章は素晴らしいものが多い。「自然と人間との共生」とか「生態系の調和を乱すな」といった「標語」を幻想であるとし、人間が自然の論理を潰しきってしまわない範囲内で、自然と人間の論理がせめぎあ…

ハンニバル戦記(上・中・下)/塩野七生〜ローマ人の物語3〜5

民族とは何なのか、その興亡は何によるのかということを考えさせられてしまう。ギリシャ人の気質のようなもの、ローマ人の周辺諸国への対し方の変化。明治の日本人と今の日本人と・・・。指導者の資質というのもそうだが、現在の日本人気質というものを考え…

ローマは一日にして成らず(上・下)/塩野七生

おじさんの教養書みたいにみられていてなんとなく敬遠していたが、やはりおもしろい。ぼちぼち読んでいこうと思う。 ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)作者: 塩野七生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/06/01メディア: 文庫…

聖の青春/大崎善生

短くても、苦しくても、・・・無念だったかもしれないけれど、なんと天晴れな人生だろう。 こういう題材は(自分で書いていて嫌な言い方だなと思うけど)出来る限り淡々と記すべきだと思うんだな。著者の思い入れみたいなのが読み手に感じられるとイヤらしく…

嘘つきアーニャの真っ赤な真実/米原万里

リッツァ、アーニャ、ヤスミンカ、著者が幼い時に暮らしたプラハでの友人との再会が東欧の激動の時代を浮かび上がらせる。「読者は踊る」の解説を米原が書いていたのと逆にこの本の解説を斎藤美奈子が書いている。私は斎藤美奈子を高く評価するが、太平洋戦…

文明の生態史観/梅棹忠夫

論説・思想という分類になるのなのかもしれないが、著者自身エッセイとしていることもあり、とりあえずこうしておくことにする。半世紀前に書かれた著名な著作。山本七平「空気の研究」だったか(これも随分昔の本だ)、比較的最近読んだ本で言及されていて、…

タイムスリップ・コンビナート/笙野頼子

ヒェ〜、ガツン、ぶはは、はれほろひよ〜。恋愛用マグロ、鮪中落ち、中落合から下落合、京浜コンビナートから四日市、現在から過去へ、スーパージェッター。巨大虱の子は私の子?・・・クラクラする。すげぇ。宮本輝にはわかんねぇよなぁ。*1 私にもわからん…

戦下のレシピ/斎藤美奈子

女性誌の記事から戦前から戦後の食生活を浮き彫りにしようとしたもの。斎藤美奈子の着眼点の面白さ。全体としてみればそんなに新しい驚きはないのだけれど(若い人には衝撃的かも?)、ディテールでは色々な発見。 戦下のレシピ―太平洋戦争下の食を知る (岩…

極大射程/スティーヴン・ハンター(上・下)

ハードボイルドの魅力満載。それぞれの人物がくっきり描かれているし(端役のサリーが今ひとつだけど)、ストーリーも月並みな言い方ながらジェットコースターと言っていいでしょう。基本的に伏線もきっちり張ってあってご都合主義という感じもせず、楽しめ…

ノヴァーリスの引用/奥泉光

冒頭、「死」が絶対の零であったとしたら人間は耐えられるか、と提示される。こういう風にいい加減に端折って書いてしまうとありきたりだけれど、冒頭から引き込まれてしまうのは著者の筆力でしょうか。抽象性の高いフレーズが多いので(テツガク的あるいは…

遥かなるケンブリッジ/藤原正彦

ケンブリッジで1年程の研究生活を送った際にしたためた数学者のエッセイ。「若き数学者のアメリカ」もそうだが、この人の子どもを見る目は、とても温かい。芯から子どもが可愛く思えるのだと思う。 また、いずれの著作も、異文化紹介や蘊蓄ばなしにとどまら…