HONMEMO

読書備忘録です。

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の蜃気楼/山田太一

角田光代の解説を読んだ後で何をメモしておけばいいのか。大学を出て撮影所に入り、助監督になったばかりの主人公、美登利役の「凄い」美人の15歳の少女、下手な中年役者の3人が33年後に交わるかと思われた時、すべては冬の蜃気楼であったのかと…。 冬の蜃気…

近代秀歌/永田和宏

著者は、細胞生物学者であり、歌人・朝日歌壇の撰者。近代の短歌のうち「日本人なら、せめてこれくらいの歌は知っていて欲しいというぎりぎりの百首」の鑑賞。岩波新書第1号は茂吉の「万葉秀歌」だそうだが、本書は、同様ロングセラーとなる名著だと思う。「…

八月の砲声/バーバラ・タックマン

第一次世界大戦勃発直前から、当初のドイツ軍の西部戦線での破竹の勢いを食い止めたマルヌの会戦まで(日本軍部にも大きな影響を与えたという東部戦線のタンネンベルクの戦いも含む。)を描くピュリッツァー賞受賞の「戦記」。 今から見ると情報伝達手段が限…

日米交換船/鶴見俊輔、加藤典洋、黒川創

太平洋戦争開戦後、日米間で、それぞれ相手国に暮らす人々を交換する船が仕立てられた。第一次交換船で帰国した1500人ほどの中に、来栖三郎、野村吉三郎ら外交官のほかに、ビジネスマン・研究者、学生などが乗船しており、鶴見俊輔もその中にいた。 本書は、…

北欧モデル/翁百合、西沢和彦、山田久、湯本健治

高負担高福祉の北欧型社会モデルの優位性は、リーマンショック後の経済成長や財政の健全性などからみても明らかであるが、状況の異なる日本にその仕組みをそのまま導入できるわけではなく、むしろ参考になるのは、ユニークなモデルを構築し、実行してきたプ…

宗教を生みだす本能/ニコラス・ウェイド

道徳的直観というものが生得的なもの(本能)であるというのは論拠がもう一つしっくりこないけれど、まあ直感的にそうなのかなと思う。一方、宗教行動が集団選択(淘汰)の結果としての進化した行動なのだというのは、原始社会の信仰(儀礼、音楽、舞踏など…

おどろきの中国/橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司

これからの日中関係(日韓もそうだが)を考える上で、宮台真司の言う「溜飲厨」「承認厨」の弊に陥ることのないよう改めて自らを戒めたい。 いくつか気づきの点をメモ。 中国の社会組織の原則 1.自分は正しくて立派(自己主張が強い) 2.他者も自己主張…

重金属のはなし/渡邉泉

重金属におる健康被害について、水銀による中国皇帝らの早逝、あるいは白粉(おしろい)の鉛被害などは聞いたことがあったが、ローマ人がワインの貯蔵に鉛製品を使用すると味がマイルドになること(鉛糖)を発見したことで、帝国を滅ぼしたのではないかとい…