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読書備忘録です。

ダーウィンの呪い/千葉聡

本来のダーウィンの進化論は、進歩(主義)とは無関係、また自然選択は適者生存とは異なるものだが、社会に受け入れられやすい形に都合よく規範化、改変されて、功利主義的経済政策や階級闘争帝国主義(植民地)政策などの「科学的」根拠とされた(ダーウィンの呪い)。行き着いた先がナチスホロコーストだが、優生政策はナチス以前から英国、米国はじめ各国で実施され、日本でも強制不妊を可能とする優生保護法が廃止されたのは比較的最近のことだ。しかし、優生思想(学)の考え方は葬り去られたわけではなく、ゲノム編集などの技術の登場により、いわば新しい優生学として、遺伝子治療や遺伝子強化についての広範かつセンシティブな生命倫理上の課題が議論されるようになっている。

そのような困難な課題の検討に当たっての重要な視点の一つが、科学的事実から価値判断や規範への論理的飛躍、科学を装う分かりやすい説明(ダーウィンの呪い)がディストピアへの道を開いたことを忘れないことである。

進化学の要点とその歴史的展開、現代における課題について、分かりやすく整理されている。