HONMEMO

読書備忘録です。

2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

天皇家の“ふるさと”日向をゆく/梅原猛

軍国主義下のプロパガンダに利用され、その後反動的に抹殺された日向神話を、幼い頃から反軍国主義的思想を持っていた梅原が科学的に検証しようとして現地を調査した旅の記録。いずれ、「塔」「隠された十字架」のような形で読めることを期待したい。 梅原の…

行きずりの街/志水辰夫

シミタツっていうのか。これも初めて読んだ作家。バブル期の物語。もう一つだなぁと思いながら読んでいたが、最後の1ページで印象ががらっと変わった。北上次郎の解説によれば色々な作風の作品を描く人みたいなので、もう何作か読んでみようかと思う。 行き…

終戦のローレライ/福井晴敏

ガンダムというかSFが入っていたのか・・・。 映画とのメディアミックスで売ることを前提として書かれた本らしい作りである一方で、国のあり方とか、人の生き方かくあるべしみたいな話が鬱陶しいくらいに長々と語られて、ちとくどい気もする。売れてる本に対…

松浦寿輝2冊 花腐し/もののたはむれ

この作者の作品はひょっとしたら文庫化されないのではないだろうかと思い、単行本を買おうかと思っていた矢先に、2冊続けて文庫化され、早速購入。 これは素晴らしい。滅びゆくものの美というのか(ちと違うか、なんと言うべきか)。あふれる雨と水のイメー…

文章読本さん江/斎藤美奈子

これで私の斎藤美奈子ブームも一段落。読みたいと思っていた本は一応読んだという感じ。 作文・綴り方教育と文章読本の成り立ちを歴史的に読み解いて面白かった。特に第3章「作文教育の暴走」に新しい発見があった。斎藤の文体模写も笑わせる。小林秀雄賞受…

最悪/奥田英朗

初めて読む人気作家。鉄工所のおっさん川谷、銀行のOLみどり、ちんぴら和也無関係の3人それぞれが抱えるトラブルが深まり、ブチ切れるゾという臨界点で3人が出会い、最悪の訳のわからない混乱状態に陥る。 町工場の日常、川谷の人柄などの描き方に特に感心…

一九三四年冬−乱歩/久世光彦

作家として行き詰まりを感じていた江戸川乱歩を主人公とした幻想的な小説。井上ひさしの解説以上に言うことなし。乱歩ファンにはたまらないだろう。作中作「梔子姫」は乱歩以上に乱歩らしいとカバー裏にあるが、まさにそんな感じ。乱歩は、随分前に文庫で「…

光の教会/平松剛

建築家安藤忠雄にかねてから興味を持つところがあって、読んでみた。経済や技術的制約の中で、思惑、利害を異にする建築家(設計家)と依頼主や職人が、緊張感をはらみながら一つのモノを作り上げていくその過程を描く。安藤の真摯な人となりに感心し、一つの…

蒼穹の昴/浅田次郎

ちょいと期待しているところと違った。本書解説の陳舜臣とか宮城谷昌光、あるいは吉川三国志のようなイメージをもって読んだのだが。中国歴史ロマンということで括れば同カテゴリーなのだが、どこが違うのか、あるいは私にとって不満なのか。一つは、文体、…

汝ふたたび故郷へ帰れず/飯嶋和一

ストレートな再生物語。ボクシングシーンは、思わず力が入ってしまう。この作者もっと読まれてもおかしくないと思う。 短編「スピリチュアル・ペイン」、「プロミスト・ランド」併録。 汝ふたたび故郷へ帰れず (小学館文庫)作者: 飯嶋和一出版社/メーカー: …

名人/川端康成

藤沢秀行「野垂れ死に」からの囲碁つながりで。以前から読みたいと思っていた本。 本因坊秀哉の引退碁(相手は木谷實当時七段)に題材を取ったもの。持ち時間40時間、半年にわたって打ち継がれたという。 名人の死を前にした鬼気迫る対局なのだが、両者とも…

[フィクション]優しいサヨクのための嬉遊曲/島田雅彦

島田雅彦は、私と(福田和也とも)同年代。これまで、この本のタイトルや島田の風貌などから、何となく敬遠して読んだことがなかった。ここで描かれた閉塞感、もどかしさなど、よく時代を捉えているようにも思う。福武文庫の解説は加藤典洋。 優しいサヨクの…

なぜ日本人はかくも幼稚になったのか/福田和也

目次より(抜粋)。 −「誇り」と「責任」は生命より大事 −歴史の「共有」なんてできるわけない −「善意」と「親切」だけで国は成り立たない −教育とは「高い価値」を押し付けることだった −「戦争は悪だ」と誰もが思い込んでいる −生命自体に「価値」がある…