HONMEMO

読書備忘録です。

2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

生きる/乙川優三郎

表題作のほか、「安穏河原」、「早梅記」の計3短編。直木賞受賞作。乙川優三郎の本を読むのは、4冊目か。 縄田一男の解説が直木賞の選評なども引用しつつよくまとまっていて、ここに付け加えてメモをしておくようなことはない。しみじみと、清々しく、じんわ…

レーザー・メス 神の指先/中野不二男

レーザー・メスの開発に取り組んだ脳神経外科医滝沢利明とエンジニアのプロジェクトX話。開発の苦労話よりも脳外科手術の実際がリアルに描かれていて迫力がある。 ただ、作品全体としては、プロジェクトX的な面白さも何か飛びぬけて面白いということもないし…

牛への道/宮沢章夫

「青空の方法」がツボだったので。クタ〜、ヘナ〜ってな感じ。もっと読も。 牛への道 (新潮文庫)作者: 宮沢章夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/04/25メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 53回この商品を含むブログ (67件) を見る 105円@BO

松岡利勝農林水産大臣自殺

安倍総理は「残念だ。慙愧に堪えない。」とコメントしたって言うけれど、なんか変じゃないか?「慙愧に堪えない」って、恥ずかしくて顔向けができないってな意味だと思うのだが。 辞任を認めてやれば死なずに済んだのにそういう判断ができなかった自分の不明…

ナバホへの旅 たましいの風景/河合隼雄

アメリカ先住民ナバホの人々の文化が教えるものは、現代の西洋文明、グローバリズムなどの矛盾がさまざまに問われる中で示唆するところがとても大きい。「格差社会」問題に対処するために、セーフティネットとしての中間的共同体の役割の見直しなども言われ…

手仕事の日本/柳宗悦

民藝運動の創始者柳宗悦が、昭和10年頃全国を訪ねて、手仕事、手工芸品を紹介したもの。すでにその頃、機械化に押されて危機に瀕していたものも多いが、現在どれだけのものが残っているのだろうか。 具体的な地域の手工芸品の紹介については、地図、索引があ…

日本人の法意識/川島武宜

法律を学ぶ者にとっての必読の書とされるのだろうが、一般人にとっても教養書として面白く読める一冊だ。学生の頃読んだと思うが、すっかり忘れている。 日本人は権利意識に乏しいとか、権利義務を明確・詳細に書き込むことを好まない等の契約に関する法意識…

ポケットに名言を/寺山修司

名言、箴言っていうのものの響き方は、やはり出会い方によるところも大きいだろう。まとめて示されてもウワァという感じだな。 ひとつだけ、沁みたものを部分的にメモ。 …… それは…詩になりました どんな名台詞よりもしみじみと心に沁みました 口ずさんでい…

忘れられた日本人/宮本常一

言わずと知れた民俗学の基本書。今更ながらに読む。「今更ながら」が本当に多い。その辺の新刊書なんか読んでる暇がないな…ってこともないが、やはりぽっと出の新人の小説なんかは基本的に先送りにしないと仕方ないなと最近強く思う。 かつて(戦前)の農山…

三島由紀夫賞選評(断片)

読売の書評サイトに三島賞についての記事。 佐藤友哉の受賞作「1000の小説とバックベアード」について、選考委員の一人、島田雅彦は 「大変子供っぽい作品ではあるけれど、文学に真摯(しんし)に向き合う姿勢がある。ドン・キホーテの突撃を高く評価し…

紫禁城の黄昏/R.F.ジョンストン

清朝最後の皇帝宣統帝溥儀の家庭教師ジョンストンによる記録。中華民国が成立し、清朝が崩壊した後、1919年頃から溥儀の日本公使館への亡命(1924)頃までの混乱の時代を描く。 貴重な第一次史料と言っていいと思うけれども、一方で、著者は、溥儀に入れ込ん…

藤原伊織さん逝去

冥福をお祈りします。「テロリストのパラソル」は息長く読み継がれると信じます。 asahi.com:作家の藤原伊織さん死去 - 出版ニュース - BOOK

プールサイド小景・静物/庄野潤三

表題作のほか、「舞踏」「相客」「五人の男」「イタリア風」「蟹」の7短編。「プールサイド小景」は芥川賞受賞作。 巻頭に置かれた「舞踏」の冒頭が鮮烈で、引き込まれてしまった↓。 家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮のようなもの…

閔妃暗殺/角田房子

明治維新から日清戦争終結/三国干渉の頃にかけての日朝関係を、李氏朝鮮の皇后閔妃の登場から暗殺(というか謀殺)に至るまでを軸に描いたノンフィクション。 不満がないことはないが、まずは真っ当なノンフィクションだ。 閔妃は、スケール百分の一の西太后…

三島賞・山本賞発表

三島由紀夫賞は、佐藤友哉「1000の小説とバックベアード」、山本周五郎賞は、恩田陸「中庭の出来事」と森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」と発表。asahi.com:第20回三島由紀夫賞・山本周五郎賞決まる - 出版ニュース - BOOK 三島賞は、佐藤の受賞…

百鬼園随筆/内田百間

百けん先生は、何でそんなに借金を抱えているのかが謎なのだが…。 新潮文庫のカバー装画は芥川龍之介が書いたものとのこと。なかなか味がある。解説は川上弘美。 内田百けんの「けん」(門構えに月という字は、以前はちゃんと書けたのにな。) 百鬼園随筆 (…

スズキさんの休息と遍歴またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行/矢作俊彦

全共闘ノスタルジーというかカリカチュアというか。NHKでやっていたチューリップの特集を見ながら読んでたけど、全共闘世代といっても矢作俊彦はチューリップとは全くシンクロしないな。矢作俊彦によるイラスト付き、ちょい漫画風の作品。 スズキさんの休息…

堕落論/坂口安吾

今更ながらに坂口安吾をはじめて読む。今でもインパクトある文章だが、戦後直後に与えた衝撃はいかばかりであったかと思う。「文学」とは何なのかということが少しわかったような気もする。「不良少年とキリスト」の太宰論も面白い。 …戦争は終った。特攻隊…

今夜、すべてのバーで/中島らも

中島らもといって、「明るい悩み相談室」を新聞連載中に読んだことがあるかもしれないといった程度なので、実際上初めて読むに等しい。 アル中(依存症)のディテールてんこ盛り。私自身も依存症に近いと思っていたが、依存症と酒好きは質的に異なることがわ…

新「敗戦後論」‐論座6月号/加藤典洋

加藤典洋の論文の紹介が朝日の書評サイトに(記事)。 「敗戦後論」における憲法「選び直し」の論をさらに深めたものということで興味をそそられる。「内田樹・神戸女学院大教授の主張を踏襲する論」とあるけれど、内田樹の「9条どうでしょう」は加藤典洋の…