町田康による山頭火の文芸評論・評伝。山頭火に見る「人間のどうしようもなさ」を我が事のように感じるという町田康だからこその、真に迫る最良の山頭火評ではないだろうか。「山頭火の句は、完成した三昧境から生まれる神韻縹渺とした句ではなく、重い荷物を背負った山頭火の生身とどうしようもない人間の壁が衝突した時に響く音、生じるエネルギー」であり、町田は切なく共感しつつ、そこまで徹底できないという。町田康の小説のぐだぐだの登場人物はどこか山頭火を思わせるところがあるのだが、"分け入つても分け入つても青い山"の読み解きの最後に置かれた"しばかれてもしばかれても阿呆"という戯れ句の秀逸さに笑う。