HONMEMO

読書備忘録です。

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

災害ユートピア/レベッカ・ソルニット

大災害発生時、つかの間、アナーキーな相互扶助的ユートピア(パラダイス)が生まれる。一方、政府、治安維持組織などはパニックを起こし(エリート・パニック)、住民の暴動を恐れるなどにより救助どころか、かえって避難を妨げることも。 1906年のサンフラン…

貝と羊の中国人/加藤徹

中国人とは何かを大づかみに(=本質を丸ごと大きく)把握しようとする本。 中国人は、貝の文化(殷人的、農耕的、多神教的、道教的、物財重視)と羊の文化(周人的、遊牧的、一神教的、儒教的、無形の主義を重視)の双方の要素をもち、さまざまな場面で、こ…

「怖い絵」で人間を読む/中野京子

絵画、とりわけ十九世紀以前の絵は、「見て感じる」より「読む」のが先だと思われます。一枚の絵には、その時代特有の常識や文化、長い歴史が絡み、注文主の思惑や画家の計算、さらには意図的に隠されたシンボルに満ち満ちています。現代の目や感性だけでは…

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる/石井好子

1963年上梓。暮らしの手帳に連載されていたということで、ああそれらしい、そういう雰囲気、手触りがあるなと思う。ほとんど料理の作り方ばかりが書かれているのだけれど、それにとどまらず、パリ(西欧)というと、まだまだアクセスがとても大変な時代に、そ…

女たちよ!/伊丹十三

1968年上梓の、食、酒、女、車、ファッションなどにまつわるエッセイ。 その映画にもみられる徹底した細部へのこだわりは著者ならではで、当時、庶民には馴染みの薄いアルデンテのスパゲッティ、アボカド(=鰐梨!)、フランスパン、カマンベールについての…

神去なあなあ日常/三浦しをん

カバー裏に、林業エンタテインメント小説の傑作、とある。なにやら林業エンタテイメント小説というジャンルがあるようで、愉快。48年に一度の御柱祭のような村祭りの大祭や、神隠し、山おろしなどの不思議がなじむ山村の豊かな暮らしが楽しく描かれている。 …

上海にて/堀田善衛

1945年3月から46年末までの上海での生活を57年の再訪を機に振り返るエッセイ。 あの時(8月15日)天皇はなんと挨拶したか。負けたとも降伏したとも言わぬというのもそもそも不審であったが、これらの協力者に対して、遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得スという、この嫌…

未完のファシズム/片山杜秀

第一次世界大戦で明らかになった「総力戦」、昭和の軍人は、「持たざる国」がいかにして「持てる国」と戦争をするかを考える。 小畑敏四郎(皇道派) 持たざる国は、短期間で敵を包囲殲滅するしかない。しかし、この戦略は、相手が素質劣等の場合のみを想定す…

狂人日記/色川武大

これはなかなかしんどい小説。著者は、ナルコレプシー(眠り病)という病気だったとか? 解説は佐伯一麦。 狂人日記 (講談社文芸文庫)作者: 色川武大,佐伯一麦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/09/11メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 185回この商品を含…

神は妄想である/リチャード・ドーキンス

ドーキンスによる、「徹底した」宗教(特に一神教、創造論)批判。イスラム教、米国のキリスト教は、世界の紛争の原因であったり、男女差別のもとであったり、その弊害が極めて大きいことは明らか。米国で無神論を表明することは極めて難しいが、そのような…

台湾海峡一九四九/龍應台

著者は、台湾の文学者、文化大臣。日本統治下での戦争、日本の敗戦から国共内戦、49年の蒋介石の台湾への敗走という大動乱の時代を、著者の両親、親族の世代の人々(外省人、内省人など)はどう生きたか。ノンフィクションではあるが、イデオロギー的な考察…

「地球のからくり」に挑む/大河内直彦

エネルギーを地球レベルで、歴史的に、科学的に大掴みに理解する手助けになる本。 日本人一人は30人の奴隷を使っているに等しい(消費熱量30万キロジュール、摂取熱量1万キロジュール) 地表に届く太陽エネルギーのうち、光合成で固定できるのはその0.1%300…

働かないアリに意義がある/長谷川英祐

タイトルや表紙から受ける印象とは異なるなかなか真面目な進化生物学の本。やさしい語り口だが、結構専門的で難しいところもある。 コロニーが効率よく仕事を処理していく仕組み「反応閾値モデル」 真社会性生物の利他行動→血縁選択説 群れることでの相乗効…

人を殺すとはどういうことか/美達大和

2人を殺し、無期懲役で服役中の著者が、贖罪とは何かを考え続けたその記録。10人を超える服役囚についても、それぞれがその犯した罪にどう向き合っているかを聞き出しているが、反省の念が窺がえる人がほとんどいないという実態は、そういうものかと思いつつ…

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか/羽根田治ほか

2009年夏、大雪山系トムラウシ山で、ツアー登山の18人が嵐の中遭難、8人が亡くなった事故(事件というべきか)の検証をしようという本。 遭難の経緯を追い、ツアー登山の問題点を指摘するほか、「気象遭難」「低体温症」「運動生理学」という章立てで専門家に…