HONMEMO

読書備忘録です。

2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

経済学の犯罪/佐伯啓思

グローバル金融資本主義批判の書。 "今日のグローバル世界の構造的な矛盾をもたらしているものは、…発展段階と文化や社会構造が異なった多様な国々が、まったく同一の画一化された世界に投げ込まれて競争にさらされているという点にある。" すなわち、"各国…

戦争の条件/藤原帰一

本書の結びにあるように、国際問題は、教育問題と同様、素人がテキトーに(知識、分析、経験に基づかずに)発言できる領域であるが、すっきりした意見や議論で理解できるものではない*1。本書は、そんな難しい(答えのない)国際問題、国際政治を考える際の考え…

闇の奥/辻原登

戦時中、首狩り矮人族を追ってボルネオで行方不明となった民族学者を探す物語は、ボルネオのジャングルはもとより、熊野の山奥、チベット最深部あの空白の5マイルのツァンポー峡谷を舞台に、現実とフィクションのあわいを企み深く紡がれる。闇の奥 (文春文庫…

ゆるく考えよう/ちきりん

著者のブログは、たまにのぞいていた。本書もそうだが、その視点になるほどと思わせるところが、結構ある。 自己啓発本を読むことを批判する「自己啓発本」というのも、ユニークだわな。ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法作者: ちきりん出版社/…

くう・ねる・のぐそ/伊沢正名

クソ本は世に数多あるが、本書は、そういうクソみたいな本ではなく、クソについて真面目に考え、取り組んだ本。 まあ、つきあいきれん、という感じではあるが。本書を、ウェッと思うことなく読み通せれば、糞土師の愛弟子となれるであろう。くう・ねる・のぐ…

科学者の卵たちに贈る言葉/笠井献一

我が国生命科学の第一人者(先頃読んだ本の著者中村桂子の師)江上不二夫の言葉、人となりを弟子筋にあたる著者が噛み砕いて伝えようとするいわば「伝道」の書。 昨今、役に立つこと(特に短期的に経済効果が見込まれること)ばかりが求められているように思…

見仏記/いとうせいこう・みうらじゅん

個性的な2人による仏像鑑賞。観念的な見方をするいとう、即物的な傾向のみうら。鑑賞はどこまでも自由。見仏記 (角川文庫)作者: いとうせいこう,みうらじゅん出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1997/06メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含む…

歴史を変えた外交交渉/フレドリック・スタントン

取り上げられる外交交渉は、 アメリカ独立 ルイジアナ買収 ウィーン会議 ポーツマス条約 パリ講和会議 エジプト・イスラエル停戦協定(第一次中東戦争) キューバ危機 レイキャヴィク首脳会談 著者の主観を交えず、交渉のドラマをコンパクトに整理している。 …

わたしの渡世日記/高峰秀子

昭和の日本映画全盛期を支えたトップスターの一人、高峰秀子の半生記。 美女のものとは思えない男勝りの文体、勝気な、芯の通った生き方は、「渡世」日記というにふさわしい。 養母(親類、縁者も)とのバトルが凄まじいが、一方、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、新…

都市の誕生/P・D・スミス

時代を超えて、地域・文化を超えて、様々なキーワードで都市を縦覧する。面白いエピソードの紹介(カエサルは、渋滞対策のため、荷車の日中の往来を禁止し、市民に迷惑がられたとか)もあるものの、全体として焦点が定まらない、評論とエッセイの間のような文…

さよなら渓谷/吉田修一

これはある意味「悪人」をより複雑にした変奏曲だな。 「悪人」が犯罪者と逃亡幇助者の美しい関係であるのに対し、本作は、「レイプでは加害者は許されるが、被害者は許されない」というやりきれない状況の中での加害者と被害者の間の愛憎という難しい設定に…

叙情と闘争/辻井喬

昨年亡くなった辻井喬(堤清二)の回想録。 経営と文学という水と油ほども異なる二つの分野で、超一流の業績を残したが、本書で次のように書かれていて、やはりなかなか簡単なことではないのだろうなと思う。 自分にも難解に見えた条件として、経営者である人…

科学者が人間であること/中村桂子

筆者は、我が国生命科学の第一人者、JT生命誌研究館館長。 「人間は生きものであり、自然の中にある。」という認識を共有することによって、近代文明を見直し、新しい社会づくりを進めようとする提言。 こういう考え方って、広く表層的な共感は得られるのだ…

永遠の0/百田尚樹

300万部を超えるベストセラーだそうだ。泣かせるラストはTV放送作家ならではのザッツエンターテインメント。ストーリーにもっとひねりがあるのかと思ったが、比較的ストレート。絶対に生きて帰ると言っていた宮部がなぜ特攻で死ぬに至ったのか、その葛藤を詳…

アラスカ物語/新田次郎

アラスカに身を埋めた明治の日本人フランク安田の物語。 北極海沿岸のエスキモーは、乱獲による鯨資源の減少、麻疹の流行で滅亡の危機に晒される。フランク安田は、ゴールドラッシュに沸くアラスカ中部ユーコン川沿岸へと彼らを導き、アラスカのモーゼと呼ば…