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読書備忘録です。

経済学は悲しみを分かち合うために/神野直彦

宇沢弘文の思想の系譜に連なる財政社会学第一人者の自伝。大企業(日産自動車)の労務担当という経歴を持つ経済学者というのもなかなかいないだろう。

「分かち合い」「共生」を謳うグループの中心人物だと思うが、そのための負担(財政)のあり方についての国民的合意の道筋は全く見えない。今の野党(政権与党もだが)は高福祉、低負担というポピュリズムを増幅させるばかり。野党は昨今のような政治状況の下でも支持率が低迷していることをどう考えているのだろう。ヨーロッパ大陸型、スウェーデン型高福祉社会(共生社会)を目指すことを鮮明にして、財政については、消費増税+所得税の累進強化(富裕層増税)+年金等改革による若年層負担軽減と高齢者負担増というような対立軸を打ち出したらどうか。

政治を観客として楽しむ「観客社会」(ポピュリズム)から、問題解決者として自発的に参加する「参加社会」へと転換しなければ、新しい時代は作れないとの言葉は重い。