雇用慣行を中心とする日本の社会の成り立ちの分析。以下備忘メモ。
日本社会は、大企業型、地元型、残余型の3類型でできている。
大企業型は、正社員、終身雇用といういわゆる日本型雇用。日本社会の3割。
地元型は、地元から離れない、農業、自営業など。社会保障は、カイシャとムラがベース(厚生年金と高齢になっても働く農林自営業を想定して作られた国民年金など)。
残余型は、カイシャ、ムラに根ざさない、非正規など。
正社員は減っておらず、自営業が減少、非正規が増加(地元型→非正規)。
欧米の企業は、上級職員(exempt)、下級職員、現場労働者の3層構造で、企業横断的に採用や昇進。job descriptionによる採用=職務の平等。企業が違っても賃金は変わらないー職務給。学位が重要になる。上級職員は、成果主義。
日本は、社員の平等。大企業かどうか、どの会社かの区分が重要。学位より、社内のがんばりが重要になる。
高度成長期前は、日本も3層構造。ただし学歴による。職員と工員の間の差別は激しく、工員に年功制、長期雇用はなかった(社員の平等はなかった)。起源は官庁制度と軍(高等官、判任官、等外の3層構造。俸給は学歴と勤続年数で決まる。任官補職と階級制度)。
戦時期の総力戦体制と労働者不足、戦後の生活苦、民主化の流れ→職員・工員混合の企業別組合の形成(生活共同体)→社員の平等、年齢と家族数で決まる生活給の要求→経営側・労働側の妥協として、勤続年数を能力評価に含めた年功賃金の成立。
進学率の上昇による中卒の減少、長期雇用の定着に伴う新卒一括採用の現場労働者への拡大、高卒の現業への配置や大卒の販売職配置など→全員を社員に。併せて職能資格制度(官庁・軍隊型)の導入=1960年代に日本型雇用の定着
1970年代後半、一億総中流と言われるような安定状態。
一方、この頃から、日本型雇用に伴う高学歴化と中高年の増加による賃金コストの上昇→長期雇用、年功賃金を維持するため、その適用対象を限定=人事考課の厳格化、出向・非正規・女性など、社員の平等の外部を作り出す。
大企業型の増加が頭打ちとなる中で、自営業の減少と非正規の拡大が進む。大企業型以外の人々は、承継した持ち家や地域的なネットワークなど、貨幣に換算できない社会関係資本の助けを受けて、一家総出の労働で生きていた。自営セクターの衰退と社会関係資本の減少の中で、日本社会のしくみのあり方が問われている。