HONMEMO

読書備忘録です。

2007-01-01から1年間の記事一覧

ゲルマニウムの夜/花村萬月

年の締めくくりに読む本としては、さわやかとは言いかねるし、ふさわしい本ではないけれど。 神は欲しているときに言葉をくださらないが、どうでもいいときには言葉の中に満ちている。つまり、神は遍在しているのである。 とか、読んでてちょっと気恥しいと…

回顧の季節4

今年読んだ本は、例年の数え方で133作(146冊)。で、例年のとおり今年の3冊。今年は、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作などノンフィクションをよく読んだので、その中から、本田靖春「不当逮捕」。 純文学系からは、昨年に引き続きやはり堀江敏幸で「雪沼…

回顧の季節3

朝日の書評委員のおすすめ3冊はこれ。 気になるのは、北田暁大、鴻巣友季子、酒井啓子、重松清、橋爪紳也、渡辺政隆あたりの推薦本。特に、重松推薦の「滝山コミューン一九七四」(原武史著)、「蟻の兵隊」(池谷薫著)。

駅前旅館/井伏鱒二

むしろ正月にほのぼの読む福笑小説のような。映画にもなってたはずだが、換骨奪胎してるだろうな…正月にDVDで見てみようか。 河上徹太郎と池内紀の豪華解説2本付き。それぞれの解説から。 元来井伏氏の小説は、この種の古風な小市民生活の裏にある情実や人情…

回顧の季節2

有隣堂読書推進委員の「今年の一冊」。松浦理英子「犬身」のほか、そのうち読みたいと思うのは、最相葉月「星新一」、城戸久枝「あの戦争から遠く離れて」。

木造建築を見直す/坂本功

これまた家つながりで。木、木材、木造建築についての入門書として最適の本ではないだろうか。ひょっとすると「自然(エコ)原理主義」的なものではないかと警戒してしていたが、さにあらず。「木造建築はダメ」でもなく、「最高だ」でもなく、科学的に、しか…

回顧の季節

今年もあと10日ほどとなって、今年1年を振り返る企画や「○○がすごい」なんてのも出そろってきたようだ。読売のサイトを、とりあえずリンク。松浦理英子は気になっている作家なので、いずれ。 お知らせ : YOMIURI ONLINE(読売新聞) お知らせ : YOMIURI ONLI…

14歳の子を持つ親たちへ/内田樹・名越康文

内田センセの本なので、ハウツーであったり、教訓めいたお話であったりするはずもなく。息子も15歳で、ちとずれてるし。ということで、まあ気楽に内田節を楽しもうと思って買って、実際お気楽に楽しく読んだ。 「勝ち組」「負け組」じゃなくて、「利口組」「…

脱出記/スラヴォミール・ラウイッツ

ヤクーツク近くのシベリア強制収容所を7人で脱走し、極寒のシベリアを南下、炎暑のゴビ砂漠を縦断してチベット、ヒマラヤを越えてインドに脱出するまでのサバイバルの記録。 椎名誠が絶賛していた本*1で、いつか読みたいと思っていたので、文庫化されたのを…

思い通りの家を造る/林望

家つながりで。 都市には都市の原理があるが、東京には田舎の原理が残り、ねじれた形での持ち家志向になっている。日照が欲しい、庭が欲しいという農村的意思が、パリのような都市の合理性を持ちえなくしてしまったと。 イギリスのセミデタッチトの家、「寄…

いい家は無垢の木と漆喰で建てる/神崎隆洋

最近本を読む時間が取れない…。感想を書いておくような本でもないのだが、埋め草として。 コストの話がないし、無垢材の欠点を甘んじて受けとめろというのか、その対処のしようがあるのかといったことが書かれていなくて、要するに自社宣伝本以上のものでは…

不動産は値下がりする!/江副浩正

教養というジャンルでもないのだが、この手の本はあまり読まないのでピッタリしたカテゴリーがない。 土地は生産され、床は増加し続け、一方、金利は上昇するってことで、不動産価格は下落すると。長期的には人口も減るし、全体として見れば、価格が上がると…

砲撃のあとで/三木卓

満洲からの引き揚げの苦難の中で、少年の見たもの、感じたものは。芥川賞受賞作の「鶸」だけでなく、どの短編も、少年の心理、感受性が細やかに描かれている。すばらしい。こういう作品が、私のイメージする典型的な純文学ないし芥川賞作品だ。 砲撃のあとで…

神々の山嶺/夢枕獏

サービス精神たっぷりの山岳エンターテインメント。大部ではあるけれど、読みやすい本で、小説を読み慣れない人でもあっという間に読めるだろう。マンガにもなっているらしいけど。 「そこに山があるからだ」という言葉で有名な、エベレストで遭難したマロリ…

現代人の論語/呉智英

論語は、読んでいるつもりの人も実は読んでいないという。「我々が知っている論語は、経学化した儒教のいわば検閲を通過した論語なのであり」、経学儒教が公許しなかった論語の章句が面白いとして、さまざま紹介され、解説される。古典は、良いナビゲーター…

サントリー学芸賞・野間文芸賞

サントリー学芸賞 飯尾潤「日本の統治構造」がサントリー学芸賞を受賞。福岡伸一「生物と無生物のあいだ」は社会・風俗部門で。 お知らせ : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 野間文芸賞 佐伯一麦「ノルゲ」はいずれ読む。 新人賞の鹿島田真希、西村賢太は芥川賞…

接近/古処誠二

山本周五郎賞や直木賞の候補になったりしている作家ということで読んでみた。有態に言えばできそこないのような気もするが、あまり集中できなくて、斜め読みになったので……。 接近 (新潮文庫)作者: 古処誠二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/07/28メディ…

脳と仮想/茂木健一郎

TVなんかでみていると、「何だこのおっさんは」みたいな感じなのだが、この本を読むと、やはり頭のいい、また、教養のある人だなと感心する。 三木成夫を読んでみよう。 解説は中沢新一。小林秀雄賞受賞。 私たちの生の基盤を与えてくれるのは、「現実の写し…

となりのクレーマー/関根眞一

苦情対応が「楽しい」とさえ感じられるという苦情処理のプロによるハウツー本。クレーマーの生態が恐ろしくも興味深い。中島義道vs関根眞一ってのを見てみたい……。 となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ)作者: 関根眞一出版社/メ…

東京大学応援部物語/最相葉月

滅多に勝つことのない東大野球部を応援するのは、報われることのない「純粋応援」とでも言うべきもの。熱い。濃い。わけ判らんけど涙が出る。 三浦しをんの解説もいい。 東京大学応援部物語 (新潮文庫)作者: 最相葉月出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/10…

東大法学部/水木楊

全く期待せずに読んだのだが、それにしても散漫な、見るべきところのない本だった。 (追記)著者についてのWikipediaが結構辛辣で、むべなるかなという感じ。→水木楊 - Wikipedia 東大法学部 (新潮新書)作者: 水木楊出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/12/1…

宣告/加賀乙彦

死刑囚の魂の救済を扱った名作として知られる大著。ドストエフスキーを日本語に分かり易く翻訳するこうなる、という感じの本だった。主人公他家雄の言う「愛」というものは、実感としてはわからない。いつか啓示が訪れるだろうか。 死刑制度や精神医療につい…

ガラスの地球を救え/手塚治虫

息子が中一の時の課題図書だかの一つに上がっていた本で、最近「まちの本屋のオススメ本」という企画にも取り上げられていたので、へえと思って読んでみた。 よい子のための道徳の時間(?)の副読本みたいな本だな、こりゃ。手塚治虫はやはりマンガを読むべ…

ノーベル平和賞

アル・ゴアにノーベル平和賞とか。不都合な真実とは言わないが、へんてこりんな真実だな。内田樹先生はえらい→「地球温暖化で何か問題でも?」

国連の政治力学/北岡伸一

国連、国連代表部の日常や国連における日本の果たすべき役割がよくわかる。今も安保理改革、日本の常任理事国入りに向けての地道な努力は続いているのだろうか。外務省もしょうもないところばかりあげつらわれるけれど、ここは日本の外交官がんばれ!とエー…

父と暮せば/井上ひさし

戦後ほどない頃の広島を舞台にした、原爆で死んだ父の亡霊と生き残った後ろめたさを引きずる娘の二人芝居。私は父子ものに弱いのだ。よいお話を「ありがとありました」。 父と暮せば (新潮文庫)作者: 井上ひさし出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2001/01/30メ…

東京のオカヤマ人/岩井志麻子

エッセイというより連作短編ホラー小説というべきかもしれない。 ホラーと官能・エロスとの親和性は高いけれど、ホラーとユーモア・笑いというのは相反するもので、共存することはなかなか難しいと思うのだが、本書は怖くて笑える稀有な本というべきか。 東…

北朝鮮に消えた友と私の物語/萩原遼

「友と私」の自伝的ノンフィクションに、帰国運動の摘発をくっつけたという感じの本。帰国事業の欺瞞をこの本が暴いたということではないと思うし、何で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのかよく分からない*1。振幅の激しい人のようで、好きな文章では…

yahoo文学検定クイズ

なんてのをやってみた。25問正解で、文学助教授でした。あほくさ。 →すぐに遊べるゲーム - Yahoo!ゲーム

博士の愛した数式/小川洋子

今更ながら。数学のエピソードの使い方が抜群だ。 小川洋子は、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」などを収めた「完璧な病室」を読んだことがあるだけだが、本作は随分と読みやすい作風になったなという感じ(本屋大賞だし。)。「ミーナの行進」も本作に…