2012-01-01から1年間の記事一覧
今年読んだ本は、168冊、1日平均149ページ(読書メーターによる)で、読書記録をつけ始めてから一番よく読んだ年になった。 年末恒例、今年の○冊。思いつくままなので、何冊になるか・・・。 小説では、 辻原登 許されざる者 (上) (集英社文庫) 津島佑子 火の山…
いわゆる標準的経済学は、認知や判断に関して完全に合理的であって、もっぱら自己の物質的利益のみを追求する「経済人(ホモエコノミカス)」を前提として理論を打ち立てるもの。これに対し、実際そんな人間は存在しないので、人間の感情や直感、記憶などの…
1983年のほたる、ありの行列、ノミの愛情、ディア・ドクター、満月の代弁者の5編からなる短編集。僻地医療の取材をもとに書かれたもの。といっても、ディア・ドクターにしても医療というよりは、医者の父とその息子の関係を描く物語で、僻地医療の問題点を抉…
スパイ小説の最高峰とも言われるということで。007みたいなものを期待すると読めないだろう。 ナイロビの蜂もそうだったが、エンタメとしては読みにくい。これは多分翻訳のせいではないな。 ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文…
1979年イラン米国大使館占拠事件は、私が学生の頃の事件だが、このカナダ大使館に脱出していた米国大使館員の救出のことは全く覚えていない。しかも、ハリウッド映画のロケハン部隊に偽装して出国を図るとは、まさに小説よりも奇なり。こういう諜報機関が存…
文明の衝突もなかなか大部なので、とりあえず手ごろなところで。 1998年の日本における講演録、1996年の「文明の衝突」の要旨、1999年の「孤独な超大国」を収める。中西輝政による解題つき。 日本の同盟に対する感覚は「基本的にはバンドワゴニングであって…
副題は、インド仏教徒の頂点に立つ日本人。その人佐々井秀嶺のノンフィクション。インドで差別と闘う仏教の教導師だが、任侠道の親分のような感じが破天荒で面白い。胡散臭さも含めて。 結局、極めて政治的な運動になっていて、評価はいろいろあり得よう。佐…
自身のBCGの勤務経験や外資系企業社員・役員らへのインタビューによって、主として外資系企業に就職(転職)したい人に向けて、「外資系企業ってどんなところ?」を書いた本。そういうハウツー本的な意味で類書がゴロゴロしている気がしないでない。何かどこ…
マラウィの平均的かやや裕福な(?)農家に生まれた少年カムクワンバ君。勉強をして農家の厳しい暮らしから抜け出したいという夢は、大飢饉で学費が払えなくなり、失われたように見えた。そんな中で図書館で見つけた本をヒントにガラクタを集めて発電のため…
池澤夏樹編集の世界文学全集の1冊。1998年に上梓されたものの本邦初訳。アフリカのルポルタージュで、小説ではないが「間違いなく文学である。」として全集に採られている。池澤夏樹は、ノンフィクションよりルポルタージュの方が、著者その人の思想や完成が…
サントリーのPR誌に連載されていたものということで、異界のバーテンダー九鬼さんの作るカクテルがきっかけとなる連作短編は、幻想的で、奇怪で、官能的。カクテルグラスを片手に、ゆったりと読みたい。 解説は松浦寿輝。 完本 酔郷譚 (河出文庫)作者: 倉橋…
テーマと離れて、奥さんに対する著者の愛情というか、円満な夫婦の姿というかを読む本のような気もする。 やせれば美人 (新潮文庫)作者: 高橋秀実出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/08/28メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブログ (22件) を見る
経済成長には、労働力人口の減少を上回る生産性の向上を持続させる必要があるが、成熟社会である日本ではもう成長は見込めない、日本社会の衰亡は免れないという悲観的な見方が広がっている。そのような覚悟をするにしても、あきらめず不確実な未来に賭けよ…
文楽は昨年かな、国立劇場で一度見たことがあるだけ。バックステージツアーや大夫、三味線、人形遣いそれぞれの解説などもしてもらって、なかなかいいものだなと思った。 本書は、やはりもう少し文楽に造詣の深い人向きかもしれない。人間国宝の著者の解説で…
カポーティー「冷血」のようなものをという編集者の依頼に基づいて、昭和38年の実際の事件に取材して書かれたノンフィクション・ノベル(昭和50年書き下ろしたものの改訂新版)。*1 主人公は、5人殺しの凶悪犯だが、詐欺の手口が弁護士を騙ったりして大胆で…
フェルマーの最終定理の証明に至るまでの3世紀にわたる数学者たちの苦闘。私のような素人に、その証明が分かるわけはないのだが、その筋道は少なくとも分かったような気にさせるところがすごい。谷山・志村予想などのほか、日本人数学者が貢献していることも…
書評、エッセイなど雑文集。 「本屋大賞」を正面から腐していて、根性を感じる。『(書店員の書いたポップの)文章はたいていひどい悪文。確信をもって言うが、書店員がスーパーの店員より本をたくさん読んでいるわけではない。』だって。書店員敵に回してど…
副題は金沢21世紀美術館の挑戦。いかにして、多くの人が訪れる美術館としたかという、ビジネス本によくある経営者ものの類。立派な方だと思う。失敗談も苦労話もなくて、手柄話が繰り返されるところはご愛嬌。 おまけの村上隆との対談は、村上がほとんどイン…
「弱くても勝てます」がツボだったので。スイミングスクールで水泳を習うのだが、ちょっと考えすぎだろ、という感じ。「弱くても勝てます」の開成高校の生徒の理屈っぽさは、著者高橋秀実のそんな「考えすぎ」の性格の投影なんだな…。 「考える人」に連載さ…
枕木探偵事務所に、熊埜御堂さんが依頼人として現われ、助手の郷子さんを交えて、雷雨に降り込められた中、延々と、いったりきたりしながら話をする。枕木さんの話し方が「スイッチバック」みたいだと言うのは郷子さんだが、この物語自体もそんな感じ。 この…
在特会というのもあまり知らなかったが、まあネトウヨの大宗がおそらくそうであるように、思想信条なんかより、単に鬱憤晴らしをしたいだけというとんでもなく傍迷惑な輩ということのようだ。それがみじめな承認欲求の仕向けるところであるとして、それを承…
ジョーカーシリーズの第2弾。まあ、もう十分かな。 ダブル・ジョーカー (角川文庫)作者: 柳広司出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/06/22メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (18件) を見る
遺伝性のプリオン病である致死性家族性不眠症(FFI)というのは知らなかった。イタリアで40家族くらいというのだからそんなものかもしれないが、CJD、vCJD、BSE、スクレイピーなどのほかにも、インドネシアのクールーなど様々なプリオン病がある。その謎の解…
トラ・トラ・トラ!は、小学校のころ、はじめて映画館で見た映画。黒澤明が監督を解任されて騒ぎになっていたことはちっとも知らなかった。綿密な調査をもとに、渉外担当青柳と黒澤との間のミスコミュニケーションと重圧下での黒澤の精神状態が招いた悲劇を…
脱力系、ぐふふ系ノンフィクション。 週に1日3時間しかグラウンドを使う練習ができないチームが勝つための戦略とは…ということで、開成高校ならマネーボールのようなデータ野球か、何か知力にものを言わせたセオリーに基づく戦略を立てるのかと思えば、さに…
ガソリンスタンドを経営する早川勇と弁護士のその弟修の関係は、GSを継いだ勇の息子稔とカメラマン猛との関係にそのまま引き継がれたということなのだなあ。その4人の独白で綴られる智恵子の転落死の真相がゆれる…というミステリー的なプロットに乗せて、そ…
高校最初の物理の試験で30点を取ってから、物理を敬遠していたのだが。 MITでのweb公開講義(白熱教室物理版だ)の楽しさは、紙媒体でも十分楽しい(実験の模様とかはやりビジュアルに見たいけど)。 著者専門のX線宇宙物理学についての解説も、ちと難しいと…
科学は、「限りなく白に近い仮説であっても真理にはなれない。」 タイトルが怪しくて手に取っていなかったが、取り上げられる数々の例示が面白く、楽しく読める本。 マイナスイオンは科学的根拠なしという話はよく聞くのだけれど、それをウリにしている家電…
2年近くにわたるアジア・アフリカバックパック旅行で、考えたこと、感じたこと。 開高健ノンフィクション賞の選考委員の言葉が帯にあって、「独特な傲慢な切れ味」「いわば、啖呵を切りながら旅をしてきたのだ。」などとある。女性一人でこのような旅行をす…
開戦の日から占領下の日々までの文学者の日記。取り上げられるのは、高見順、山田風太郎を中心に、永井荷風、伊藤整、内田百輭、清沢洌など。 山田風太郎や伊藤整は、びっくり。 平野啓一郎と著者との対談つき。 日本人の戦争―作家の日記を読む (文春文庫)作…