HONMEMO

読書備忘録です。

2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ア・ルース・ボーイ/佐伯一麦

主人公鮮(あきら)の、静かだけれど、ポジティヴな、意識的な、そして素直な生き方を、素直に受け止めることができる。最近読んだ純文学系作品の中ではピカ一。 ア・ルース・ボーイ (新潮文庫)作者: 佐伯一麦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1994/05/30メデ…

ぼんくら/宮部みゆき

久方振りに宮部みゆきを読む。おでこ、弓之助という少年の書き方が相変わらず上手いというか、いいなと思う。ちと漫画的に過ぎる気もするが(なんかマンガの「浮浪雲」だったか(?)をイメージさせる。みすずの眼鏡とか、浮浪雲に出てくるこどもが掛けてな…

プチ哲学/佐藤雅彦

「あっという間に読める」てな惹句や感想なんかがよくあるが、この本はホントに「あ」と言っているうちに読み終わってしまう(字が少ないので・・・)。はあ。私にとっては読書は究極的には暇つぶしなんで、こういう本は何か悲しい。そんなことは承知しつつ…

[評論]文学的商品学/斎藤美奈子

町田康「夫婦茶碗 (新潮文庫)」などが戦前の貧乏小説のカリカチュアであるとか、芦原すなお「青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)」のバンド文学としての面白さとか、かゆいところに手が届くような指摘がいろいろあって、なかなかよい。 文学…

趣味は読書。/斎藤美奈子

斎藤が本書で取り上げている40数冊の本のうち私が読んでいた本は2冊だけで*1、まさに氏の言う「邪悪な読者」であろう私は、死ぬまでに読める本が何冊あるのかと考えれば、その手の下らないベストセラー本なんぞ読むものかと思う方なので(でも気になるんだよ…

裏声で歌へ君が代/丸谷才一

登場人物が、国家とは、国家と人とはを議論する場面が長々続くのだが、上滑りしている感じがする。議論される国家論が私が期待している議論とずれているためかもしれないし、20年以上前の作品で国家というものの状況もかなり違ってきていることもあるかもし…

「わからない」という方法/橋本治

ソクラテス「無知の知」のようなテツガク的な話か、それともハウツーものか、どんな本だろうと思いながら、それなりに売れた本だった記憶があってしばらく前にブックオフにて購入していたもの。橋本の本は、これまで、氏が多分気軽に書いた古典に関する本を…

日輪の遺産/浅田次郎

お宝引揚げの「シェヘラザード」とモチーフが似ているところがあるのだが、私は本作の方が好きだ。M資金まがいのお宝探しっていうのはそれだけでなんだかなぁ・・・なのだが、浅田だから読ませるものになるのだろうと思う。お宝捜しが主旋律でもないし。お…

第一阿房列車/内田百輭

クスっと笑える*1。私も飲んべぇなだけに、共感できるところ多々あるのだが、名所旧跡に興味なく、列車に乗って宿で飲んだくれて帰ってくるだけで満足って・・・。車内でも飲んでるとき以外は子供のように窓から顔を出して景色を眺めてることが多いみたいな…

エディプスの恋人/筒井康隆

七瀬三部作完結篇。読む楽しみをしばらく先延ばしにしていたが、やっと読んで満足。「家族八景 (新潮文庫)」、「七瀬ふたたび (新潮文庫)」、本作とそれぞれ違うテイストで楽しめた。神とは、とか自らの存在とはといったこともあるのかも知れないが、赤いフ…

福田和也の値うち

私が読んだ数少ない福田和也の本を採点するとどうなるか。 「地ひらく」*1 80点 緻密な考証と福田のナイフによって石原莞爾という人間のイメージを一新させらるとともに、日本のあり方についても考えさせられるところが多々あった。 「余は如何にしてナショ…

作家の値うち/福田和也

作家の値うち作者: 福田和也出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2000/04メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (39件) を見る 5年程前に上梓された本のようだ。挑発的というのか、下品といえば下品だ*1とも思うのだけれど、面白いし、その評価…

猛スピードで母は/長嶋有

芥川賞受賞の表題作のほか、「サイドカーに犬」を収録。両者同様のモチーフで、甲乙つけ難い秀作だと思う。何だろ、小説らしい小説だなという気がする。言葉が、小さな描写が、何といえばいいのかよく分らないが、なかなかうまい。詩人かなと思ったら俳句を…

火花/高山文彦

ハンセン病により23歳で亡くなった作家北条民雄の生涯。「聖の青春」に描かれた棋士村山聖もそうなのだが、死と向かい合いながら不朽の仕事を残す人は、周りを困惑させるような尖った自我を持っている人なのかもしれない。そうだからこそ、その仕事、才能が…

柔らかな頬/桐野夏生

極上のエンターテインメント小説。登場人物の皆が皆ボロボロになっていく。それでも何故だろう不快な物語ではない。著者が登場人物に対して不当な仕打ちをしているというようには感じられないからかな。 カスミ、内海の夢でいくつかの犯人像を提示しながら、…

世間のウソ/日垣隆

ガッキィ節相変わらず好調のようだ。昨年の鳥インフルエンザ・マスヒステリーについて、ゼロリスクはファシズムの発想であるとして、煽ったマスコミや一部の学者を糾弾、さらには行政の大衆迎合主義を批判する。毎度厭味のある文体ながら、論旨には説得力が…

eBOOKOFF

eBOOKOFFに発注した本が届いた。Amazonはたまに利用しているがこちらは初めて。古書だけにちょいと心配していたが、どの本もきれいで問題なし。良かった。2000円以上で送料がただになるので、どっちでもいいような本まで買っちゃったが・・・。積読本がまだ…

日本のたくみ/白洲正子

200ページほどの小品なのだけど、現代に生きる(といっても四半世紀近く前だけど)日本の伝統文化・技術の粋を凝縮して伝えてくれる。これはとってもお得な本だ。日本のたくみ (新潮文庫)作者: 白洲正子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1984/12/20メディア: …

私の百人一首/白洲正子

子供の頃、正月に親父が詠んでかるたをとったものだったが、自分が親父になって子供とかるたとりをしたのは1回だけだろうか。これから百人一首を百人「ひとくび」などと読み間違える子供が増えたりして・・・。和歌の良さが分ったのは、私の場合、丸谷才一「…

白洲正子2冊

白洲正子を2冊続けて読む。心豊かになる想い。不愛想じゃなくて武相荘に行ってみたくなった。

すべてがFになる/森博嗣

【ネタバレギリギリ注意】ネタバレにならないように書いたつもりなのだが、結構ギリギリかもしれないので、未読の方ご注意を。(3月2日追加) いわゆる本格ミステリーってのはなんだか肌に合わなくてあまり読まないのだけれど、そこは踊る読者、評判につられ…