HONMEMO

読書備忘録です。

2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

わたしを離さないで/カズオ・イシグロ

柴田元幸が解説*1で、内容を具体的に述べるのを差し控える、予備知識は少なければ少ないほど良い作品だと書いているのが、何だか「じらし宣伝」みたいになっているような感もある。著者は、「提供者*2」「介護人」といったものをミステリーの謎のように設定…

南方熊楠/鶴見和子

何やら得体の知れない人物という感じだけをもっていたのだが、本書で南方熊楠の世界、生涯、仕事がコンパクトによく分った。業績、仕事もさることながら、人物が、生き方が不思議で、魅力的だ。 南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫 528)作者: 鶴見和子…

高野聖・眉かくしの霊/泉鏡花

高野聖は明治33年の作。妖しくて、艶っぽくて、恐ろしくて、美しい・・・。蛇ののたくる道、山蛭の落ちてくる森を抜けた一軒家にたどりついた若い修行僧は、白痴と暮らす美しく妖しい女と出会う。滝川で汗を流す時に*1世話を焼いたその女は、男を猿や馬など…

スローカーブを、もう一球/山際淳司

早実と駒大苫小牧の熱戦があって、長いこと積んでいた本書を取り出して読んだ。最初の「八月のカクテル光線」は、甲子園の名勝負として名高い箕島対星陵の延長18回に至る試合に取材したもの*1。ラスト、敗れた星陵の選手達は9月になると車の免許を取って、ク…

日本のいちばん長い日/半藤一利

日本のいちばん長い日といえば、大宅壮一だと思っていたので、書店で平積みされているのを見たときに、ン?と思ったのだが、後書きを読んで納得した。 ポツダム宣言受諾決定から8月15日正午の玉音放送に至るまでの間に起こったクーデタ未遂事件(宮城事件)…

天皇と東大/立花隆

7年間にわたる文芸春秋での連載をまとめた大著。正月に読むつもりでいたけれど、7ヶ月ほどをかけて土曜日曜に少しづつ読んできた。 学生時代に「日本共産党の研究」を面白く読んだのだけれど、本書は、その正反対の右側がどうであったかというところが極めて…

村上春樹イエローページ1/加藤典洋

気になっていた本の文庫化で、嬉々として購入。幻冬舎文庫??げっ・・・幻冬舎って、こういう本も出すんかい。それはともかく、 「風の歌を聴け」は、・・・「気分が良くて何が悪い?」というポップスの気分で書かれた日本で最初の小説である。この小説は、これま…

星野道夫メモリアルプロジェクト@Miraikan

池澤夏樹の講演、山口智子による朗読、ボブ・サムによるストーリー・テリングという三部構成。 池澤夏樹の講演では、星野の早すぎる死とその後の氏の業績、自然観などの大いなる広がりを、キリストの死と教義のその後の広がりになぞらえるところなど、私には違…

ホテル・ニューハンプシャー/ジョン・アーヴィング

訳者による解説によると、村上春樹は本書を「複雑で明らかに優れた小説」と評しているとのこと。そのとおりなのだろう。英米文学(あるいは英米に限らず文学全般)を学ぶ人などには興味深いことこの上ない小説なのかもしれないなどと思ってしまう(屈折してい…

星野道夫写真展

昨日映画を待つ間、銀座松屋で開かれている星野道夫の写真展をのぞく。凄い混雑だった。私の行く催し物はこんなのばかりだ・・・ミーハーというのかなんというのか。 写真展というのははじめて行ったのだが、狭いところに窮屈に展示されていて気の毒な気がし…

太陽

昨日朝11時半のを見ようと思って割りに早く行ったのだけれど*1満席とやらで、1時半から見る。銀座シネパトスにて。 昭和天皇は、天皇機関説問題、ニ・ニ六事件等を経て神格化されていったとはいえ、絶対権力を自ら積極的に行使するということをしなかった。む…

吉村昭さん逝去

高熱隧道、破獄、ポーツマスの旗、戦艦武蔵、生麦事件、プリズンの満月、海の史劇などなど大好きな作家だった。ふぉん・しいほるとの娘とかまだ読んでいない本も多くある。 ご冥福をお祈りします。