HONMEMO

読書備忘録です。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

両義の表現/李禹煥

美術家李禹煥の評論集。「13歳からのアート思考」でいう「探究の根」を李禹煥自らが解説し、様々なアートととどのように向き合ったかを語る。 ・絵画にせよ彫刻にせよ、自己のエゴで全てが決定される作品は、閉じた意味の塊になりやすく、生きた感じが出にく…

立花隆死去

社会的インパクトの大きさで言えば田中角栄研究だろうが、個人的には、宇宙からの帰還。 そのほか、何冊の著作を読んだろうか?青春漂流、天皇と東大なども印象深いものだった。 サイエンスの応援団というイメージもある。 ご冥福を。

分水嶺/河合香織

SARS、新型インフルエンザなどの経験がありながら、危機管理体制が不十分だった(政府側の言い方では危機管理を重要視する文化が醸成されてこなかった)ために、新型コロナの初期対応において、専門家たちはリスク分析・評価の役割を超えて「前のめりに」行政…

記憶する体/伊藤亜紗

健常者としての記憶が刻まれた体で障害のある体を生きる人は、一つの物理的な体の上で、健常者と障害者の体が重なり、固有のパターンを生み出す。多重人格ならぬ多重身体。そのありようは様々。幻肢、幻肢痛は、脳が記憶している手や足の動きと現実の手や足…

警視庁科学捜査官/服藤恵三

科学捜査、捜査支援の普及に努めた著者の自伝。おそらく優秀な人で、それゆえに毀誉褒貶ある人なのであろうが、自伝とはいえ自意識過剰というか、ここまであからさまに自らの出世欲を書けるのは見事。 警視庁科学捜査官 難事件に科学で挑んだ男の極秘ファイ…

政治改革再考/待鳥聡史

平成を通じて行われた選挙制度、行政、日銀・大蔵省、司法制度、地方分権に及ぶ広範かつ大規模な政治改革は、憲法に規定される公共部門のあり方を転換する明治、戦後に次ぐ第三の憲法体制を作り出したと評価しうるもの。 このような改革の背景には、80年代に…

病魔という悪の物語/金森修

副題はチフスのメアリー。20世紀初頭のニューヨーク、腸チフスが蔓延、貧しいアイルランド移民の賄い婦メアリーは、本人に自覚の全くない中、健康保菌者として3年にわたり離島の小屋に隔離される。その後一旦は制限付きで釈放されるものの、今度は死ぬまで23…

「三代目」スタディーズ/鈴木洋仁

「三代目」は、ウジ社会(血縁のみでつながる)とイエ社会(頻繁な養子縁組によって続く)、さらにはムラ(無原則かつ繋がりがない)の交わるところに位置するがゆえに、旧弊にだけ囚われるのではないが、新しいルールにのみ従うのでもない「あてどなさ」を特徴と…