HONMEMO

読書備忘録です。

2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

文壇/野坂昭如

野坂昭如の文章を初めて読んだ。「エロ事師たち」などの文体について、当時、「西鶴の影響がある、日本の古い語り物の血筋を引く、助詞をとっ払い行替えのない語り口は、古いようで斬新…」などとも評されたようだが、独特の文体でおそれいった。 文壇ゴシッ…

枯葉の中の青い炎/辻原登

表題作のほか、「ちょっと歪んだわたしのブローチ」「水いらず」「日付のある物語」「ザーサイの甕」「野球王」の全6編。どの短編も凝りに凝っているという感じで、贅沢な一冊。これまで読んだ辻原登の作品の中では一番良かった。 解説は鴻巣友季子。各短編…

放送禁止歌/森達也

1988年まで要注意歌謡曲指定制度という民放連のガイドラインがあって、制度廃止後も、それが事実上「放送禁止」の機能を持っていた。また指定の基準も極めていい加減であった。これは、関係者(表現の自由に特にセンシティヴであってしかるべき放送関係者)の…

気がつけば騎手の女房/吉永みち子

三冠馬ミスターシービー騎乗で有名な騎手吉永正人の妻、吉永みち子の半生記。東京外語大卒、「勝馬」入社、草創期の「日刊ゲンダイ」の競馬記者、3人の子供づれの吉永騎手と結婚…なかなか波乱の半生だが、何と言っても、ミスターシービーの母シービークイン…

河合隼雄さん逝去

特別思い入れのある方であった訳でもないのだけれど、いい顔してるなあと思っていた人。著書はごく最近エッセイを1冊読んだことがあるだけ。文化庁長官をされたのも、人柄ゆえってことなんじゃないかなと全く根拠なく思うのだけれど。 ご冥福をお祈りします…

夜の来訪者/J.B.プリーストリー

本探しの参考にしているサイトの一つ「スゴ本」さんが最近『スゴ本』に指定していたこともあって(NHK週刊ブックレビューでの逢坂剛の推薦も見ていた)、期待して読んだ。 期待どおりの面白さだった。二重底になっている計算しつくされた贅肉一つないプロッ…

芥川賞・直木賞発表

芥川賞は諏訪哲史「アサッテの人」、直木賞は松井今朝子の「吉原手引草」。北村薫受賞の目はまだあるのだろうか……。 cf.asahi.com:芥川賞に諏訪哲史さん、直木賞は松井今朝子さん - 出版ニュース - BOOK

ナイロビの蜂/ジョン・ル・カレ

スパイ小説の巨匠ということで違う本を探していたのだが、映画化された関係か本書がたくさん新古書店においてあったので手にとってみた。 なんだか結構読みにくい、社会派風の冒険小説だった。個人的に、集中して読めない環境だったこともあるのだけれど。 C…

14歳からの哲学/池田晶子

14歳に語りかけるような文体が気持ち悪い。この文体が嫌で投げ出す中学生が結構いそうな気がする。 難解な部分もあるけれど、少なくとも哲学的思考というものがどういうものかということは良く分かる。例えば、こんな感じ。 …目の前に花があることの確実さを…

ハラスのいた日々/中野孝次

何年積んでいたか。20年前のベストセラー。ま、素直にジンときてしまう。 ハラスのいた日々 (文春文庫)作者: 中野孝次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1990/04メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 11回この商品を含むブログ (19件) を見る 105円@BO

明治天皇/ドナルド・キーン

新潮新書の第1号「明治天皇を語る」がやはりちょっと物足りなくて、いずれ読みたいと思っていた本。なかなか難しい対象だと思うのだが、やはりさすがに手堅い描き方で、好感を持って読んだ。解説は入江昭。 明治という時代は帝国主義の時代で何かと批判があ…

芥川賞・直木賞候補作発表

芥川賞、直木賞の候補作が発表された。 記事→<朝日><読売> おっと、恒例メッタギリは、ここ。 <芥川賞> 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」、川上未映子「わたくし率イン歯ー」、柴崎友香「主題歌」、諏訪哲史「アサッテの人」、前田司郎「グレート生活…

三島由紀夫賞選考委員改選

三島賞の選考委員が改選されたようなので、メモしておく。→記事 新委員は小川洋子、川上弘美、辻原登、平野啓一郎、町田康。 規定では任期4年となっているので、任期満了による改選なのだろう。宮本輝なんかずいぶん長いことやっていたように思うので、再任…