1988年まで要注意歌謡曲指定制度という民放連のガイドラインがあって、制度廃止後も、それが事実上「放送禁止」の機能を持っていた。また指定の基準も極めていい加減であった。これは、関係者(表現の自由に特にセンシティヴであってしかるべき放送関係者)の無自覚と思考停止のなせる業である(更に、そのような態度は、自らをも含む日本人全般に通底している。)と著者は指摘する。
なるほど、放送禁止用語のようなガイドラインが歌についてもあっておかしくはなかろうが、この歌のどこがいけないんだ?というのがたくさん例示されていて、関係者がそれを全くの禁止と捉えてしまうってことなど、まさに思考停止である。
赤い鳥の「竹田の子守唄」が放送禁止扱いを受けていたこと(指定されていたかどうかすら今や明らかでない)とその背景に部落問題があったということは全く知らなかった。
岡林信康の「手紙」が冒頭に掲げられながら、結局氏が登場しなかったのが残念だ。
全体の構成が散漫な感じがするし(放送コードの問題と差別の問題が並列されてしまっている。)、感情的に過ぎる文体があまり好みではないけれど、面白く読んだ。
(7/23追記)放送禁止歌のキーワード・リンクを見てびっくり。ちょうどTBSラジオで特集があったみたいだ。何と言う偶然か。
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