日本は維新後、文明開化として西欧近代文明を受容していくが、漱石は、日本の開化(近代化)の進展は内発的でなく、外発的で皮相的(取ってつけたように西洋のものまねをしようとしているだけ)だと批判する。
また、漱石は、英国留学中、英文学研究の意義を突き詰める中で、西洋の威を借りる他人本位ではなく、自己本位を確立することが重要との考えに至る。さらにこの考え方をより広く個人の倫理として展開し、自己本位と自由(他人の尊重、義務を伴う自由)についても説く。
西欧の自然主義、浪漫主義ともに批判、独自の文学路線(余裕派などとも言われるようだが、主義(イズム)自体を批判している)を歩んだ漱石の思想は一貫している。
権威を遠ざけ(天皇だけは別のようだが)、在野を貫いた漱石の思想も爽やか。
則天去私って、本書に収録されているかと思ったのに、漱石は言ってなかったのか。