HONMEMO

読書備忘録です。

劇的再建/山野千枝

家族経営の中小企業の後継者難が課題となる中で、いわばベンチャー型事業承継という形で会社を発展させていく経営者(アトツギ)がいる。このような事業承継においては、親などの旧経営陣との確執や資産というより負債を継承して出発しなければならない場合、承継する事業が時代から取り残され、アトツギがやりたいと思う事業では必ずしもない場合があるなど、スタートアップとは異なる困難を抱える場合が往々にしてある。そのような中でアントレプレナーシップを発揮して経営を成功させる成功物語(失敗例もある)の紹介なのだが、このような経営は、上場を目指したり、M&Aを手がけたりする場合ももちろんあるのだが、それでもどこか家族経営的で従業員を大切にするようなところがあって好ましく思える。

(家族経営的)中小企業が極めて多いことが日本の経済不振の元凶のようにも言われることもあるのだが、このような経営を指すものではあるまい。

著者本人が言うとおり、中身もさることながら、語り口の「熱量」の多い本で、そういう語り口はあまり好みではないのだが、まあプロジェクトX的な仕立てになっているので馴染む文体ではあるのだろう。