著者は政府の審議会委員なども務める学者。
自給率、担い手、生産調整などについて、その問題点、経緯、あるべき方向をわかりやすく解説している。手軽な基本書と言えるのでは?
著者の基本的な考え方が表れている部分を少しだけ抜粋。
逆走、迷走の農政から脱却する必要がある。(逆走、迷走の原因の一つは)選挙の集票効果が強く意識される中で、ライバル政党との政策を際立たせるための差別化がはかられてきた点がある。しかも、近年の差別化は農家の耳に入りやすいかたちで行われてきた。(略)(このような)農家を大切にすることを標榜する政策は、(略)地方都市の住民からも共感を得やすいと言ってよい。
問題は、農業の実態がどこまで正確に理解されているかである。正確な理解のもとでの共感が寄せられた政策であればよいが、そうではないとすると、新たな政策への失望の反動で別の誤解に支えられた正反対の政策が誕生することにもなりかねない。ごく平凡ではあるが、いま必要なことは現実の農業に関する偏りのない理解の醸成であり、日本の農業にできること、できないことを見極める作業である。
農業のパワーは、さまざまなタイプとレベルの農業者の知恵と力の総和以外にはあり得ないからである。少数の成功例と同レベルの農業経営でこの国を埋め尽くすことはできない。ただ成功例に学ぶことは大切である。そこに共通するのは、日本の農業の強みをうまく活かすセンスが光っている点にある。先達の歩みから日本の農業の強みを活かす道筋を学ぶことで、多くの農業経営のパワーアップにつなげることはできる。それが全体としての日本農業のパワーアップにもなる。
- 作者: 生源寺眞一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/05/11
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