HONMEMO

読書備忘録です。

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ソーシャル・ジャスティス/内田舞

SNSの炎上をもたらす論法に名前(Whataboutism, Strawman Strategy, Gaslighting, Ad Hominem(人格否定), Middle Ground Fallacy, Appeal to Populality/ Hasty Generalization)が与えられると、その歪みが明瞭になる。 炎上問題だけでなく、差別や分断などの…

野の古典/安田登

著者の能についての著作は2冊ほど読んですごく面白かった記憶がある(忘れてるけど)。本書は幅広く古典を扱う。 多くの人が能を退屈に思うのはある意味当然。能のもつ残念(残った念)の鎮魂、癒しの力は、経験豊富な人ほど響く。これは古典一般に通じるところ…

隆明だもの/ハルノ宵子

吉本隆明は、「共同幻想論」も読んでおらず、読んだことのあるのは糸井重里との共著「悪人正機」だけ。同時代の思想家と比べてもなんとなく一種特殊な雰囲気をまとっているような気がしていたのだが、西伊豆での事故や死に際しての狂躁などを読むと、熱に浮…

行人/夏目漱石

理智の人の苦悩なんだが、特に「共感」がキーワードになりがちな現代では受けないだろうな。 関係を疑っているかのような兄に言われて嫂と出かけた先で嵐に降り込められて同宿することとなるのだが、もちろん陳腐で下司なドラマにはならない。しかし兄めんど…

彼岸過迄/夏目漱石

最近は小説をほとんど読まなくなったのだが、本書のような日常の(と言っていいのかどうかわからないが)人間関係のあやというのか、あるいは内面の動きを淡々と追っていく最近の小説にはどんなものがあるのだろう?女性作家にはまだありそうな気もするのだが…

テレビ局再編/根岸豊明

ネットとの競争や地方の人口減少などによる疲弊で、民放ネットワークは維持できなくなり、地方局再編が進むのではないかというのだが。 私が重要と考えるのは、ネットの持っていない、地方における新聞を含めての取材能力(体制)が維持されること。統合で報道…

目的への抵抗/國分功一郎

自由は目的に抵抗する。人間が自由であるための重要な要素の一つは目的に縛られないことであり、目的に抗するところにこそ人間の自由がある。 メルケルはその経験に基づき「移動の自由」の重要性を強調した上で政治家として命を守るという目的のためにその制…

東京の地霊/鈴木博之

地霊とは、土地にまつわる歴史や記憶の集積のもたらす連想性、可能性といったもの。中澤新一のアースダイバーも時間軸やスケールが異なるが同様の視点に立つものと言っていいかもしれない。 和宮(家茂没後静寛院宮)の邸地は、東久邇宮稔彦の邸地となり、戦後…

八ヶ岳南麓から/上野千鶴子

はじめて読む上野千鶴子が本書というのもなんだかなではあるが。夏が暑くなりすぎて、夏の間だけでも高原で過ごすことができたらどれほどよいか、虫やらゴミやらあっても羨ましくはある。色々ハードルはあるけれど。 時にエッジの効いた?フレーズもあるが、…

財政と民主主義/神野直彦

民主主義は選挙権の行使だけでも、デモに参加することだけでもない、何より公共の問題を解決するために自発的に組織された団体(アソシエーション)に参加することが重要。 北欧などの「参加型社会」では、投票率も高く、財政(支出と負担)に対して納得感のある…