HONMEMO

読書備忘録です。

2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ハヅキさんのこと/川上弘美

1999年から2005年にかけて発表された表題作ほか20余編の掌小説集。柴田元幸の絶賛の解説つき。 ハヅキさんのこと (講談社文庫)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/11/13メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (22件) …

八甲田山死の彷徨/新田次郎

遭難する神田隊と成功する徳島隊が対照的に描かれ、あるいは階級・身分的差別の問題を提示していることで、教訓を導く話(あるいはビジネス本によくあるリーダシップ論)として面白く、それ故にロングセラーの地位を確立している本です(映画化もされた)。…

始祖鳥記/飯嶋和一

ハンググライダーを作って(といっても時代は江戸時代)空を飛ぶことに憑かれた男幸吉の物語を軸に、海運の既得権益に疑問をもつ船頭源太郎とともに塩の独占流通に風穴を開けようとする巴屋伊平の物語など、現状を改革しようとする意識をもつ人々を併せて描…

本の音/堀江敏幸

94年から2001年にかけて諸誌に書かれた書評を02年にまとめたものの文庫化。本ノオトと掛けているのだろうと思っていたら、やはりあとがきにその旨あったのだが、その上に「本音」も聞き取っていただければとあって、座布団一枚。 書評に書き方はないが、「簡…

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い/ジョナサン・サフラン・フォア

何だったか、絶賛の書評を見て。 解説によればヴィジュアル・ライティングの手法というらしいのだけれど、そういう反則みたいな(それとも革新的なというのか)手法も実に効果的で、とても新鮮な読後感が残りました。こまっしゃくれた主人公がライ麦畑の主人…

麻雀放浪記(青春編)/阿佐田哲也

ピカレスクロマンってやつですね。「いかに積み込むか」ばかりで、なんとなく思っていたものと違ったのですが。 麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)作者: 阿佐田哲也出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 1979/09メディア: 文庫購入: 4人 ク…

雲の墓標/阿川弘之

海軍予備学生から任官して20年7月9日(終戦のわずか1月前)に特攻により散るまでの青年の日記の形を借りた小説。現代日本では思いもつかない*1、死と向き合いながら生きることのいろいろな意味での濃密さがひしひしと。なんとなく敬遠している「聞けわだつみ…

たった一人の反乱/丸谷才一

防衛庁への出向の打診をきっかけに通産省をやめて家電メーカーに天下った主人公英介。英介が先妻と死に別れて結婚するのは、中年官僚とはミスマッチの感のある若いモデルのユカリ。ユカリの父は、大学教授だが、その義母歌子が殺人犯として刑務所暮らしであ…

いつかX橋で/熊谷達也

終戦直後の仙台が舞台。空襲で母と妹を失って天涯孤独となった優等生の祐輔を主人公に、ヤクザになる特攻崩れの彰太との熱く、濃い友情、パンパン、オンリーとなることはあっても本来的に純真な性格の淑子への愛情、厳しいけれど、エネルギッシュな時代を生…