HONMEMO

読書備忘録です。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

果てしなく美しい日本/ドナルド・キーン

1958年に英文で書かれた「生きている日本」のほか、2つの73年に行われた講演録を収める。 高度成長に向う頃までの日本の民俗、文化の概況。こういうものって、日本人は書かないだろうから面白いのだと思う。2つの講演録は、内容がほとんど同じ。 果てしなく…

東大教師が新入生にすすめる本2/文芸春秋編

丸山真男の人気が高いというイメージ。いくつかブックマーク。 東大教師が新入生にすすめる本〈2〉 (文春新書)作者: 文藝春秋,文芸春秋=出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/03メディア: 新書購入: 5人 クリック: 15回この商品を含むブログ (10件) を見る

影法師/百田尚樹

読む本がなくなって、駅のホームの売店で購入。名前は知っていたが、ミステリー作家かと思っていた。 彦四郎の献身的な生き方が不自然という気がするというのはあるけれど、なかなか引き込まれる人情噺だった。全く期待していなかっただけに拾いもの。 単行…

日本を降りる若者たち/下川裕治

日本から逃避してタイバンコク(カオサン)で引きこもる若者ら*1を批判的な視線で描いている。 特段何も。 日本を降りる若者たち (講談社現代新書)作者: 下川裕治出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/11/16メディア: 新書購入: 7人 クリック: 129回この商品を…

モーパッサン短編選/モーパッサン

15編を収める。 「首飾り」は高校の教科書にあって、当時(30年以上も前になる)、国語の教師がこの結末について、余りに酷いと評していた記憶があるのだが、ひょっとすると夏目漱石の評の受け売りだったか。 モーパッサン短篇選 (岩波文庫)作者: モーパッサ…

名ばかり大学生/河本敏浩

「分数ができない大学生」(未読)と同様の本かと思いきや、これを徹底的に批判する。 つっこみどころは色々あるにせよ、 現状の問題は「ゆとり教育」によるものではないとする分析 東北大学のオープンキャンパスとOA入試を例に、大学の教員の改革への取組の重…

人間形成の日米比較/恒吉僚子

20年前に書かれた日米比較教育論。ゆとり教育の導入などとは関係なく、本書で指摘されるような自発的協調、感情移入、集団帰属意識の奨励といった日本の教育における「かくれたカリキュラム」の特徴は今もあまり変わっていない。だからこそ、「しがらみ」を…

鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンズ

第二次大戦中にドイツ軍によるチャーチル誘拐作戦が行われたというフィクション。 登場人物たちの背景が一筋縄でないことがストーリーを複雑に、面白くしている。主人公シュタイナ中佐は米国人の血が入っているし、部隊の中にはイギリス自由軍という裏切り者…

夜の公園/川上弘美

リリと幸夫は夫婦、 リリの親友春名は、幸夫と不倫。 リリは、夜の公園で出会った暁と関係。暁の兄悟は、春名と関係(心中未遂)。リリは妊娠して…。 まあどろどろながら、川上弘美らしくほんわか。 夜の公園 (中公文庫)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 中央…

大いなる助走/筒井康隆

同人誌メンバーや直木賞選考委員など文壇の生態、直木賞選考過程を戯画化して、最高におもしろい。解説が大岡昇平。 (文春文庫)" title="大いなる助走 (文春文庫)">大いなる助走 (文春文庫)作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/10/07メディ…

君たちはどう生きるか/吉野源三郎

名著として名高いが、アマゾンの評価などをみても極めて高い評価となっていて、こういう説教くさい内容の本が今なお評価されているということにある意味驚く。倫理的な話のほかに社会科学的な見方を説くところがユニーク。 丸山真男による追悼文もいい。『「…

八月の路上に捨てる/伊藤たかみ

解説の津村記久子と親和感あり。自販機の補充をして回る仕事のディテールと、その車上での主人公と水城さんのかけあいが面白い。主人公の離婚話は鬱陶しいばかりではあるけれど。 芥川賞受賞の表題作ほか、「貝からみる風景」、「安定期つれづれ」。 八月の…

銀座復興他三篇/水上滝太郎

大震災を契機に復刊されたものだろう。著者水上滝太郎のことは全く知らなかった。 表題作は、関東大震災で焦土と化した銀座で真っ先にバラックで飲み屋を始めた親父をはじめ、店に集う酔っぱらい達を描いて、復興に取り組む人々に勇気を与えるだろう。「九月…

第三の男/グレアム・グリーン

序文によるとそもそもが映画のために書いたものだそうだ。映画は著名なシーンだけ知っているけれど見ていない。ラストシーンはじめ、本書と異なる部分も多々あるようだが、映画が名作として聞こえるほどには本作はどうも、という感じはある。ただ、ウィーン…

剣客商売/池波正太郎

これは、何と言うか、大衆小説ど真ん中という感じの安心・安全小説だな。色気、食気、スリルとサスペンス、みんな中庸で、かつ登場人物がそれぞれ魅力的。 柴田錬三郎のハードボイルド眠狂四郎シリーズ(1巻しか読んでいない)を読みたくなった。 剣客商売 …

死刑囚の記録/加賀乙彦

「宣告」を書いた後に本書を書いておく義務を感じたとある。死刑囚、無期刑囚、未決囚に関するフランス語で書いた学術論文もある由。 死刑が確定したら早急に執行するのが人道的(?)という感もある。 死刑囚の記録 (中公新書 (565))作者: 加賀乙彦出版社/…

「しがらみ」を科学する/山岸俊男

「安心社会から信頼社会へ」の山岸俊男が中高生向けに書いたもの。極東ブログで紹介されていたこともあって手にとった。 以下キーワード風にメモ ジントニックの問題、スキー場のリフトの問題、離婚率減少の原因、少年犯罪の増加などの例 全体を見て本質をつ…

殉教・微笑/小島信夫

表題作のほか、小銃、吃音学院、星、アメリカン・スクール(芥川賞)、憂い顔の騎士たち、城壁を収める。 奥田英朗もいいけれど、これはまた別の次元の楽しみ。 小島信夫といえば、保坂和志→保坂和志による小島信夫の追悼文 殉教・微笑 (講談社文芸文庫)作者:…