HONMEMO

読書備忘録です。

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

日本の統治構造/飯尾潤

日本の政治制度を分析した著作として、真っ当な、優れたものの一つだと思う。分かり易くコンパクトにまとまっているし。 日本では一般に、大統領では大胆な権力行使ができるが、議院内閣制では抑制的な権力行使しかできないと思われている。しかし欧米での認…

大仏破壊/高木徹

ビンラディン/アルカイダが、勧善懲悪省なんてのを通じて無知無教養の*1オマル/タリバンを変質させ、バーミヤンの大仏を爆破するに至る過程が興味深いし、この地域の問題を考えるに当たって示唆するところが多々ある。 アフガニスタンの内紛状態は、9.11テロ…

生きている兵隊/石川達三

石川達三といえば、「蒼氓」とか「青春の蹉跌」とかだけれど、どちらも読んでおらず、たまたまフェアのようにして平積みされていた本書で初めて読む。 南京攻略戦をモチーフにしているのだが、大虐殺が描かれているわけではない。ただ、日本軍の軍紀の乱れは…

半島/松浦寿輝

東大教授だからかって言うとまあ嫌味っぽくはあるが、最近好きで読んでいる同じ仏文学者で芥川賞作家の堀江敏幸と比べると、小難しいところがあるとも言えるけれど、この人の作品もとてもいい。以下、あとがきの一部を引用。 男が迷い、惑い続けているうちに…

女王陛下のユリシーズ号/アリステア・マクリーン

数年前から読もうとチェックしていた作品なのだが、比較的最近「スゴ本」に取り上げられたこともあって、そそくさと読んでみた。 翻訳ものにありがちな読みにくさがあって前半は結構苦労するし、人物の背景が丁寧に描かれているわけではないので、感情移入し…

雪沼とその周辺/堀江敏幸

「スタンス・ドット」「イラクサの庭」「河岸段丘」「送り火」「レンガを積む」「ピラニア」「緩斜面」の計8編の連作短編。 この人の小説は本当にいい。何かここに書くとその余韻を損なってしまうような気がする。池澤夏樹の解説もいい(ホントそうだよって…

あの戦争になぜ負けたのか/半藤一利・保阪正康・中西輝政・戸高一成・福田和也・加藤陽子

たぶん文藝春秋誌上での座談会+αみたいなものだろうから、まあこんなものだろうって感想以上のものはないけれど、やはり、中西輝政の 「神風特攻」への若い世代を中心とした近年の関心の大きな高まりは、「鎮魂」というより「覚醒」の営みなのである。(略…

悪党芭蕉/嵐山光三郎

芭蕉自身が悪党だというより、自らのまわりに才能ある危険人物を引き寄せる魔力的な力をもつ人物だということなのだろう。下の引用でいう「流行をとらえる技をもつ者」であるということでもある。 俳句や芭蕉のことなど全くの素人なのだが、面白く読んだ。以…

赤目四十八瀧心中未遂/車谷長吉

車谷長吉をはじめて、こわごわ読む。これはやはりなかなか凄い。町田康のにおいがする(というより町田康に車谷のにおいがするというべきか。いずれにしても気のせいかもしれないが。)。町田康と違って、次々読もうという気はしない…と言いながら、また読ん…

冠婚葬祭のひみつ/斎藤美奈子

斎藤美奈子を久しぶりに読む。この人の切り口、視点は相変わらず面白い。それからやはり語り口だな(嫌いな人もいると思うけど。)。 葬式も結婚式もビジネスにうまいこと乗せられてアホなことになっている(?)ってのは、まあそんなところだなということだ…

めぐらし屋/堀江敏幸

「名作」とは言われないのかもしれない。軽〜い感じだし。しかし、こういう小説をまさに読みたかったのだ、いい時間を過ごした、という満足感がある。 つまらない思い出?そうかもしれない。でも、ひとが聞いたらなんの面白みもないようなことこそ、じつは最…

靖国問題/高橋哲哉

靖国問題は、首相が代わって参拝の仕方(というか公表の仕方)をちょいと工夫したからといって何ら解決されたものでないのはもちろんのことだ。いま中国・韓国が静かならいいってなものじゃないわな。ということで、比較的静かなときに、このような本を読む…

ぼくもいくさに征くのだけれど/稲泉連

23歳で戦死した竹内浩三の短い人生を姉の目を通して描く第1章、彼が残した詩と出会ってそれを広めていった人々の思いを描く第2章、そして竹内浩三の死地バギオを訪れる第3章。第1章が一番面白く、第3章は無い方がよっぽどマシという感じ。 竹内浩三の「骨の…