HONMEMO

読書備忘録です。

2009-01-01から1年間の記事一覧

銃・病原菌・鉄/ジャレド・ダイアモンド

スゴ本ブログDainさんのグリグリ2重丸のスゴ本指定ということで気にしていた本です。都心のメガ書店で面陳されていて、遅ればせながら購入しました。 ヨーロッパ人がアメリカ先住民を征服したのはなぜか、その逆でなかったのはなぜか、それは直接的には「銃…

今年の3冊

はてなで読書記録をつけ出して5年になるというのは、ちょっと驚きですが、最近は読書量が減ってきて(今年は、70冊(62作品)、今年の3冊もないもんだという感じではあるのですが、毎年のことなのでとりあえず選んでみることにします。 まずは、学術・教養関…

海狼伝/白石一郎

戦国時代、村上水軍の船大将となる主人公笛太郎の成長物語、冒険物語なのですが、主人公が真面目すぎて「海の狼」という感じは全くありません。脇役の小金吾の方が魅力的に描かれていて、むしろ小金吾を主人公にした方が余程面白いものになったのではないか…

花まんま/朱川湊人

表題作のほか、トカビの夜、妖精生物、摩訶不思議、送りん婆、凍蝶からなる直木賞受賞の短編集です。いずれの作品でも幽霊とか霊魂といった異界のものとの関わりが描かれるのですが、主人公はどの作品も子供であることもあって(子供時代を回想して描かれて…

繋がれた明日/真保裕一

殺人を犯したのち仮出獄した主人公に次々に試練が訪れて、主人公に感情移入して涙してしまいます。主人公が人を殺すまではその辺のチンピラ風だったと思われるのに、出所してからは聖人のような保護司の助けもあって、まさに「人間的な」自らの内面を真摯に…

実録・外道の条件/町田康

「ファッションの引導鐘」「「ロックの泥水」「地獄のボランティア」「紐育外道の小島」の4短編。 写真撮影のスタッフ、コンサートのエージェント、取材を申し込んできたボランティア、ニューヨーク取材に同行する雑誌編集者といった著者の周りにいる人々=…

「法令遵守」が日本を滅ぼす/郷原信郎

タイトルが怪しげなので、まあその手の本だろうと思っていたのですが、少し前になりますけれども、著者がTVでなかなか真っ当な意見を述べられていたので、読んでみることにしました。 要すれば、「法令」を形式的に守っていれば事足りるというものではない、…

笑う警官/佐々木譲

佐々木譲は、ずいぶん昔、10年も前でしょうか、エトロフ発緊急電、ベルリン飛行指令という謀略小説を楽しく読みました。最近は警察小説が直木賞候補になったり、人気のようなので、まずはその第1作(?)の本書を手に取りました。 う〜ん、陳腐ですねえ。暇…

日本辺境論/内田樹

これは「9条どうでしょう」の思想と同じものというか、そのもとになるものだなと思って読んでいたら、あとがきで、その旨が書かれていました。このような辺境人であることを自覚して、そこに価値を見出していいのではないかという立場は、ある意味、本来的な…

人間の器量/福田和也

臆面もなく、と言ってはなんですが、こういうタイトルの本を書くというのが福田和也らしいです。帯には「なぜ日本人はかくも小粒になったのか」とあって、氏には「幼稚になったのか」という著作がありますから、その嘆きと同じですね。器量人十傑なんてのが…

それでも、日本人は「戦争」を選んだ/加藤陽子

近所の本屋さんで部門別売上ランキング1位だったか2位だったかになっていたこともあって、手にとりました。 日清戦争から太平洋戦争までの日本近現代史についての栄光学園の生徒への5日間の講義をまとめたものです。あとがきにありますが、この講義が実現し…

風の影/カルロス・ルイス・サフォン

私は、逢坂剛のスペインものが大好きなので、本書は、そんな逢坂剛が絶賛している(書評)長編ロマンということで、楽しみにしていたものです。 氏が書評で「構成に難なしとせず」としていますが、ヌリアの長大な回想だけでなく、いろいろ気になるところはあ…

鼻行類/ハラルト・シュテンプケ 日高敏隆・羽田節子訳

茂木健一郎さんの書評に惹かれて読んでいたところ、日高敏隆さんの訃報が飛び込んできました。茂木さんがその翻訳を褒めていますが、わたしも日高さんの文章は好きで、氏の翻訳ということでなければ、本書を手に取ることはなかったかもしれません。 内容は、…

大東亜戦争の実相/瀬島龍三

山崎豊子「不毛地帯」*1のモデル瀬島龍三のハーバード大学における講演録です。瀬島龍三は、陸大首席卒業という日本第一の秀才ですから*2、論理的で、良く整理された、大東亜戦争への経緯を理解するための教科書のような本だと思います*3それだけにあまり面…

深追い/横山秀夫

「深追い」、「又聞き」、「引継ぎ」、「訳あり」、「締め出し」、「仕返し」、「人ごと」という三ツ鐘署を舞台とする警察もの7短編が収められています。「人ごと」だけ、韻を踏んでいないし、作品のタッチもちょっと異なるのですが、これも作者の狙いでしょ…

旅人/湯川秀樹

湯川秀樹博士って、どんな人だったのでしょう? 著者は、三高時代、多くの学生たちがバンカラ学生生活を謳歌する中で、エネルギーのほとんどを読書と思索に注ぎこんだことを、バランスの取れていない不調和な少年だったし、それを人間として立派なこととは思…

超・格差社会アメリカの真実/小林由美

評判は聞いていましたが、「格差」ブームに乗った内容のない本ではないかと思っていました。文庫化されたこともあって手に取りましたが、米国の政治・経済・社会について理解する上で重要な事柄を多角的に分析し、わかりやすく、かつコンパクトにまとめている…

物理学者・戸塚洋二 がんを見つめる

TV

ひょいとTVをつけたら、タイトルが飛び込んできました。不思議に縁があるようです。 先ごろ読んだ立花隆編「がんと闘った科学者の記録」を超える情報はそれほど多くありませんが*1、T2KというJ-PARCとカミオカンデの実験も成功したようで、故人も喜んでいる…

考える人

これまでも何度か立ち読みをしたことはあったのですが、定期購読してもいいかなと思ったりしています。 考える人 2009年 11月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/10/03メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (27件) を見る

阿弥陀堂だより/南木佳士

10年も前に新人賞をとったものの、その後なかなか良いものが書けないでいる主人公孝夫は、パニック障害を患うこととなったエリート女医の妻を連れて故郷の山で暮らし始めます。そこでの生活が、阿弥陀堂を守るおうめ婆さん、難病と闘う小百合ちゃんとの交流…

寡黙なる巨人/多田富雄

この方の名前をどこかで聞いたことがあるなと思ったのは、超一流の免疫学者としてではなく、白洲正子との交遊の関係で、どこかで聞いた(読んだ)のでしょう。能にも造詣が深く、新作能を作ったりされているそうです。そういう知の巨人が脳梗塞に倒れ、重度…

百年の恋/篠田節子

主人公の年収200万円のライターは、年収800万円の才色兼備の東大出キャリアウーマンと結婚しますが、結婚してはじめて、妻は家事ができないどころではない、片付けるということすらできない身勝手でヒステリックな女であることを知ります。離婚も考えている…

素人庖丁記/嵐山光三郎

嵐山光三郎は、悪党芭蕉とか、文人悪食とかを面白く読みましたが、真髄は、本書のような自らの五感でというか身体で書いたとでもいうべきものにあるように思います。魯山人との仮想茶漬合戦やおむすびの具は何がいいかといった現実的な話から、タケノコや豆…

甲賀忍法帖/山田風太郎

忍者というより、化物ですね。楽しい作品ではありますが、私自身は、さらに忍法ものを読もうという気はしません。明治物は面白かったので、いずれまたとは思っているのですが。推理物はどうなのでしょう。 甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)作者:…

月の扉/石持浅海

壁本としか言いようがないというのが私の感想です。 最後の最後は、そういう落とし方だったかとハッとさせられる思いもありましたが、本書のキモであるハイジャックした機内での殺人についてのトリックの構成というのか、推理の過程というのか、あまりに稚拙…

ハシムラ東郷/宇沢美子

20世紀初頭、ハシムラ東郷という日本人学僕*1の手紙というコラムが人気を集めていたというのは、初めて知りました。当初はハシムラ東郷が自ら怪しげな英語で書いているという偽装を施していたのですが、途中でアーウィンという米国人が書いていることを明ら…

風の生涯/辻井喬

フジサンケイグループの初代総帥、戦後直後の財界四天王の一人水野成夫という人をモデルにした小説です。私自身はどこかで名前は聞いたかなというくらいの感じで、正直知らない人でした。本書によると、正力松太郎や渡辺恒雄などと比べても存在感のあるアク…

鳩山内閣発足

「劇場型」といわれた小泉政権で拍車がかかったポピュリズムの弊害*1にどこかブレーキがかからないといけないのではないかと思います。妄想というべきですけれども、こういう状態がいきつくところにヒトラーがいるのではないかと思うのです。 鳩山政権には、…

がんと闘った科学者の記録/戸塚洋二(立花隆編)

ノーベル賞受賞者小柴昌俊さんの弟子で、ノーベル賞に一番近い日本人と目されていた方だそうです。 骨の髄まで科学者だった人だということがよくわかります。 最後の最後まで、なにか社会に貢献できないかと追及する姿勢に感じ入るばかりです。2009年4月予定…

ニート/絲山秋子

表題作のほか、ベル・エポック、2+1、へたれ、愛なんかいらねーの5短編。なんというのか、腫れものにさわるようなというのでもないのだけれど、ノー天気な日常とはまた違う繊細な人間関係。 ニート (角川文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 角川グルー…