HONMEMO

読書備忘録です。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

昭和天皇/ハーバート・ビックス

英文で1/4ほど読んで放り出していた。天皇が相当に政策決定に主体的判断をしていたという指摘は、やはり違和感を禁じ得ないのだけれど、それがなかなか刺激的でもある。 ピュリッツァー賞受賞 一九二七年以来、宮中グループは、…大正天皇の病弱で一五年近…

完全版 ゴッホの遺言/小林英樹

著者は芸大卒、本書で日本推理作家協会賞を受賞している。著名な「寝室」の「スケッチ」が贋作であることを、またその贋作者がだれかを推理していくところが受賞の理由なのだろう。 「寝室」と贋作と指摘される「スケッチ」との対比で、いかにゴッホの「寝室…

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか/小池滋

表題作のほか、 電車は東京市の交通をどのように一変させたか 田山花袋「少女病」 荷風は市電がお嫌いか 永井荷風「日和下駄」 どうして玉ノ井駅が二つもあったのか 永井荷風「墨東綺譚」 田園を憂鬱にした汽車の音は何か 佐藤春夫「田園の憂鬱」 蜜柑はなぜ…

家族写真/辻原登

表題作のほか、わが胸のマハトマ、谷間、光線の感じ、緑色の経験、塩山再訪、松籟。表題作は、芥川賞受賞第1作として準備された作品とのこと。家族写真を撮るときにチーズではなく、「わたしはしあわせ」と心の中でつぶやいてくださいという写真屋、それを口…

町長選挙/奥田英朗

伊良部一郎シリーズの3作目。表題作のほか、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の計4短編。このシリーズははじめて読む。奥田英朗は、久しぶりに読んだ。かみさんの本棚にあったソフトカバー版で。 町長選挙作者: 奥田英朗出版社/メーカー: 文藝…

サンダカン八番娼館/山崎朋子

副題は底辺女性史序章。極貧のかつての「からゆきさん」と3ヵ月寝食をともにした取材をもとにしたノンフィクション。高度成長前夜までこういうとんでもなく貧しい悲惨な生活が普通にあった。現代の貧乏なんて知れたものとは言わないけれど。 第4回大宅壮一ノ…

東京の空間人類学/陣内秀信

東京は、維新や地震などで断絶しているのではなくて、江戸の歴史・土地利用を継承している。バブル直前に書かれて、文庫化されたのはバブル崩壊の頃というタイミング。今ではもう検証できないところもあるだろうな。 中沢新一「アースダイバー」とか、路上観…

逃亡くそたわけ/絲山秋子

躁病で入院させられていた主人公が鬱病患者とともに脱走して九州をオンボロ車で逃亡するロードムービーのような小説。ビョーキなのにとてもまとも、真剣で、さわやかでもある。 逃亡くそたわけ (講談社文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 20…

空中庭園/角田光代

「秘密を持たない」家族のそれぞれが、実は(当然のことながら)なんともいろいろな「事情」を抱えていて、家族あるいはその関係者それぞれの目から見た家族の心理がどろどろと描かれていく。解説は石田衣良。 空中庭園 (文春文庫)作者: 角田光代出版社/メー…

絶望の国の幸福な若者たち/古市憲寿

なかなか興味深く読んだ。固い内容でありながら、おちゃらけた表現がそちこちあるのもご愛敬。 日経新聞インタビュー 絶望の国の幸福な若者たち作者: 古市憲寿出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/09/06メディア: 単行本購入: 22人 クリック: 642回この商品…