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読書備忘録です。

たった一人の反乱/丸谷才一

防衛庁への出向の打診をきっかけに通産省をやめて家電メーカーに天下った主人公英介。英介が先妻と死に別れて結婚するのは、中年官僚とはミスマッチの感のある若いモデルのユカリ。ユカリの父は、大学教授だが、その義母歌子が殺人犯として刑務所暮らしであることを隠して英介にユカリとの結婚を勧めるような食えない奴。出所した歌子は、英介夫妻と同居することになり、恋人までできるし、機動隊に投石するなどの「反乱」を起こす。いい年をした女中(時代は学生運動華やかな昭和40年代後半だけれど、その頃女中を雇っているというのがまたなかなか珍しい。)のツルまで男を作って出て行く。これにユカリと姦通するカメラマン貝塚、歌子の刑務所仲間のニンジンお豊なども含めて、まあ「俗物図鑑」、俗物たちそれぞれのちょっとした反乱絵巻といった感があります。
昭和47年の上梓。「市民」論などに時代を感じます。

たった一人の反乱 (講談社文芸文庫)

たった一人の反乱 (講談社文芸文庫)