HONMEMO

読書備忘録です。

両義の表現/李禹煥

美術家李禹煥の評論集。「13歳からのアート思考」でいう「探究の根」を李禹煥自らが解説し、様々なアートととどのように向き合ったかを語る。

・絵画にせよ彫刻にせよ、自己のエゴで全てが決定される作品は、閉じた意味の塊になりやすく、生きた感じが出にくい。制作において、自己を限定し外部を受け入れる開かれた関係性の働きは、作品にさまざまな出会いの経験をもたらし、作家を大きく越えた作品を生み出すことができる。

作品は絶えず生き続ける。制作が済んでも、内部と外部が対応しあう仕組みで機能し、危ういテンションを引き起こす。それは、どこにどのように置かれるかで生まれ変わる。作品の対応性の底にあるものが、根源的な両義性であり、そこから作品のダイナミズムや超越性が発揮されるわけである。