HONMEMO

読書備忘録です。

新冷戦時代の超克/片山杜秀

2018年の口述をもとにした本。

日本にとってのリアルな問題は、憲法より日米同盟。集団的自衛権が解釈でOKになって、憲法改正の必要性は低下。むしろ改憲案が国民投票で否定されたら自衛隊の否定に繋がりかねないという危険な賭け。中国に対しても米国に対しても今の憲法のままの方がお得、いざとなれば解釈でなんともでもなるし。

人口構成の歪みが民主主義の持続可能性を問う時代となっている。世代代表制?

成長フロンティアをなくした世界、低成長時代において一人一人が少しでも豊かになるには、最大限に消費税を上げて国家による再配分を可能にする環境を整えるなどの政策がありうる。しかし、痛みを伴う政策を訴えるのは困難で、目先の利益を訴えるポピュリズムが台頭する。民主主義社会では、成長以外に大きな支持を集められない。成長の幻想を捨てて、生産力を保ちつつ社会の安定を保持していくため、民主主義社会の中でコンセンサスを得る手段を編み出していく必要がある。加速の果ての静止というヴィジョンを受け入れる教養が求められている。

少子高齢化対策は遅すぎた。今でも大胆な支援で長期的にはある程度修正は可能かもしれないが、そのための財源は高齢者福祉の大幅削減しかない。しかし、圧倒的多数の高齢者を前提とするとこれを民主主義的手続で行うのは困難。

明治150年、近代的自我の確立どころか、タテの儒学、ヨコの国学、共同体も役立たずとなり、アノミーとなって、深刻な状況。そういう中での国民統合?の思想は、喜劇的反復としての外圧恐怖「新冷戦」か。