昨年亡くなった辻井喬(堤清二)の回想録。
経営と文学という水と油ほども異なる二つの分野で、超一流の業績を残したが、本書で次のように書かれていて、やはりなかなか簡単なことではないのだろうなと思う。
自分にも難解に見えた条件として、経営者である人間が書いていくという状態のむずかしさ、あえて名付ければ、職業と感性の間の同一性障害とでも指摘すべきズレがあったのではないかと、自分でも思う。
財界、政界の著名人はもとよりだが、三島由紀夫、安部公房、武満徹らとの交遊のエピソードも興味深い。特に三島由紀夫に対しては、真の理解者であった(あろうとした人だった)ようだ。
三島由紀夫が自らの生命を賭けて反対した思想の重要な側面は、この、手続きさえ合っていれば、その政策や行動の内容は問わない*1という、敗戦後のわが国の文化風土だったのではないか。
- 作者: 辻井 喬
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/05/23
- メディア: 文庫
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