HONMEMO

読書備忘録です。

科学と資本主義の未来/広井良典

著者によると、本書は、社会システム、制度・政策論中心の「人口減少社会のデザイン」、哲学的、思想的考察中心の「無と意識の人類史」に続く、両書を架橋する書としての3部作の最終作。前2作を読んだ者には、その著者の考え方を確認し、また理解が深まるもの。

私の関心の中心は前者の政策論にあり、数々の提言は、濃淡あれど基本的には相当程度の納得感の得られるものだ。

作者は最後「持続可能党あるいは未来世代党の必要性」として、要旨以下のように述べる。

膨大な政府債務は、社会保障費用などをつけ回ししていることを意味するが、これが年々拡大していることは持続可能性という点において危機的なことだ。

これは、

1. 日本人の相当部分(特に団塊世代など)は、「経済成長がすべてを解決する」との発想が強く、今なお一定の成長が可能と考えて、負担、分配の問題に目を向けないこと(成長により税収が増え、借金は解消される)。

2. 日本社会は、合意が困難な問題を先送りし、その場にいない人間(すなわち将来世代)に負わせる傾向が強いこと

などが理由となっている。

著者は、本来、高福祉・高負担的政策を提案していくはずの野党が減税などを唱えていることに強い違和感を持ち、今の日本には与野党含めて、将来世代のことを考えようということを論じる政党がないことを嘆く。

全くそのとおりだと思う。

立憲民主党など、どうせ一桁の支持率しかないのだから、子供、教育、介護など福祉や環境対策の充実とともに、それに見合う増税を掲げて、真の責任ある政党はどこかを問うてはどうだろうか。

井手英策の言うように、消費税の逆進性よりも所得再分配格差是正効果の方が大きい。

若い世代、比較的貧しい層こそ、目先の減税などに惑わされず、支出に見合う増税を支持した方が、基本的にメリットが大きいと思われる。

福祉を充実しろ併せて減税しろ、その結果としての国債大量発行という無責任な態度に寄り添うポピュリストにはうんざり。子供や孫たちが心配だ。

MMT? そんなギャンブルに子供達の未来を賭けられるわけもない。