HONMEMO

読書備忘録です。

経済学の宇宙/岩井克人

著者の研究人生に焦点を当て、その研究内容を俯瞰するオーラルヒストリー。

経済理論は私には難解だが、氏の不均衡動学理論は、長く主流であった超新古典派的な「動学的確率的一般均衡」モデル(現実経済が大恐慌に突入しようがバブルで加熱しようが、それは最適状態であり、どのような政策的介入も正当化されないというものらしい)やその修正版である新ケインズ派を真っ向から批判する。また、その法人論、信任論は、法人に対する経営者の忠実義務(信任関係)が単なる契約関係と混同されたことにより、米国で顕著にみられるような経営者報酬の急膨張をもたらしたと指摘。昨今生じている格差などの問題、資本主義の本質を合理的に説明するもののように思える。

謙譲、誠実な人柄がにじむ。夫人は水村美苗。最近どうしているのか。