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読書備忘録です。

アダム・スミス 共感の経済学/ジェシー・ノーマン

近代経済学の父といわれ、神の見えざる手で知られるアダム・スミスの評伝であり、また、その思想の概説書。堀内勉氏の解説が簡にして要を得ている。本書を手に取ったのは同氏の書評、読書大全による。以下主として堀内氏の解説をもとに。

当時の経済学は、政治経済学として、より広く政治学の視点を含むものであるが、スミスの思想は、より広く人間の経験の主な領域を一つの統合された理論に組み立てようとする「人間の科学」である。スミスには、国富論のほかに、社会秩序の基礎に共感、道徳感情をおく「道徳感情論」がある。

スミスの経済学が新自由主義市場原理主義的に捉えられるようになったのは、ケネス・アローの「一般均衡理論」での言及などによるが、これは大きな誤解であり、いわゆる「合理的な経済人」ではなく、共感を持つという人間像を前提とした経済理論である。このようなことからも、スミスの思想は、渋沢栄一宇沢弘文の思想に受け継がれているといえる。