HONMEMO

読書備忘録です。

イスラエル/ダニエル・ソカッチ

イスラエルパレスチナの歴史は、平和共存の合意ができる(できそうになる)と、妥協を拒む原理主義者らが暴力や無神経な挑発によってぶち壊す。暴力はこれに報復する過剰な暴力を生み、事態を悪化させるという繰り返し。

右傾化・強権化を強めるネタニヤフ政権とガザを実効支配するイスラム原理主義ハマスが当事者として対峙するのでは遠心力しか働かない。本書の上梓は2021年(日本語翻訳が2023年2月)、著者はあくまで希望を失わないと書いたが、解説が予言したとおり、「2023年は憎しみと恐怖の連鎖がさらに激しさを増す年」になってしまった。もはやシーシュポスの神話。

米国のユダヤ人コミュニティは、基本的にリベラルで、民主党支持。今やなんでもイスラエル支持という態度ではなく、ネタニヤフ政権には批判も強いということだが、トランプの基盤でもある共和党系の福音派は、ネタニヤフ寄りのユダヤの宗教超正統派支持。(トランプが進めたパレスチナ抜きの周辺アラブ諸国イスラエルとの関係改善が今回のハマスの暴発の遠因とも言われる中で、米国の役割にもどこまで期待できるのだろうか。)

寛容と妥協のいかに困難なことか。