冒頭、「死」が絶対の零であったとしたら人間は耐えられるか、と提示される。こういう風にいい加減に端折って書いてしまうとありきたりだけれど、冒頭から引き込まれてしまうのは著者の筆力でしょうか。抽象性の高いフレーズが多いので(テツガク的あるいは衒学的議論とかも結構好きだったりするんだけれど)、ひょろひょろ読んでると、あれ何だっけとページを戻らなくてはならないという部分もある。一方で、エンターテイメント性を意識して書いていて、本格ミステリの手法を用いながら、謎の解決を前に(というかミステリ的に謎を解決せずに)幻想へと転じるという手法は、なかなか面白い。基本的には、小説の「手法」の面白さってなことには余り関心はないのだけれど。ノヴァーリスの詩、猫殺人事件も読んでみたい。
- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05/20
- メディア: 文庫
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