新書らしくミスリーディングなタイトルで、内容も散漫という印象を否めません。
本書の主張するところは、親に捨てられたといってよいような子供が大量に生み出されている現代において、子を捨てたブッダの生き方を思想を再認識しようというところにあると思われます*1。子を捨て妻を捨て、共同体を捨てて遍歴の旅の後にシャカが悟ったのは、「自己を捨てる」即ち「無我」ということなのだが、そのブッダの教えは、その死後、教団が形成され、時間をかけて遠くまで伝播する中でさまざまに変容した。今その生き方をもう一度見つめ直そうと。
もうひとつよく分からないのが、インド仏教が「無我」の仏教であるのに対し、日本仏教が「無私」の仏教であるとする点です。日本の仏教者たちは、「我」の否定という困難な問題より、「心」の浄化という課題に重大な関心を払った、というところは良く分かるのですが、『人間の心は、我のように否定されるべき対象でなく、浄化されるべきものだ、心は訓練により浄化され、そこから「無私」の境地が得られる』というのですが、私には無我と無私の違いがなかなかイメージできません。
面白いと思ったのは、十大弟子を日本の宗派になぞらえるとどうかというところ。
- 法相宗(法隆寺)、華厳宗(東大寺)など学問仏教→ 舎利佛―知恵第一 迦旃延―論議第一
- 天台宗、真言宗など密教 →目犍連―神通第一
- 浄土教 →阿難―知恵第一
- 禅宗 →迦葉―頭陀第一
- 日蓮宗 →富楼那―説法第一
ふ〜ん。その他に十大弟子は、
- 須菩提―供養第一
- 阿那律―天眼第一
- 優波離―持律第一
- 羅睺羅―学習第一
仏教をもう少し幅広く知りたくなりました。
- 作者: 山折哲雄
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/07/14
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*1:「なぜ」ブッダは子を捨てたのかという点については、言ってみれば、その議論のきっかけで、それなりの分量の紙面が割かれていますが、内容はほとんどありません。