読む本がなくなって、Kindleで知財切れの短いものを漁って。「硝子戸の中」ってエッセイだったのか。
39の短い文章からなっていて、繋ぎ合わせると漱石晩年の「吾輩は猫である」みたいな趣もある。幼少期の回想なども興味深い。
最後、漱石は、振り返って、自分の欠点などを書けなかったことをまあ仕方ないというように微笑する。こういう態度も「則天去私」につながっているのかもと考えるのは穿ちすぎか。
<もっと卑しい所、もっと悪い所、もっと面目を失するような自分の欠点を、つい発表しずにしまった。(中略)そこに或人は一種の不快を感ずるかも知れない。しかし私自身は今その不快の上に跨がって、一般の人類をひろく見渡しながら微笑しているのである。今までつまらない事を書いた自分をも、同じ眼で見渡して、あたかもそれが他人であったかの感を抱きつつ、やはり微笑しているのである。>