著者は、元TBSアナウンサーで、菅直人元首相の要請で官邸に入り、広報担当の審議官として働いた。その経験を踏まえて考えたことを語りかけるような飾らない文体で綴っている。
- 「お任せ民主主義」からの脱却
市民の側も、自分たちが選んだ政治家を支える意識が必要だろう。投票したらオシマイ、あとは文句を言う対象、というのでなく、投票した責任で任期いっぱい支えること。粘り強く叱咤し、支え育てていく努力をしなければいけないのではないか。少し長期的な視野で、市民の側が政治家をどう支えていくかを考えないと、いつまでたってもこの国は、総理大臣を「高支持率で迎えては一年そこそこで追い出す」ことを際限なく繰り返すだけだろう。P55
政府の発信がわかりやすいものになっていけば、市民が的確に判断できる材料が増えていく。そうなれば、市民が自ら主体的に政治を動かしていけるようになる。p320
- 官僚案に対抗するセカンドオピニオンを政治家に送り込める仕組みの構築
「原発維持」論者の官僚は、「いっとき嫌われ者になっても原発を維持していくことが国民のためになる」という信念を持っている。官僚案に異論を持つ人は、「既得権益護持」といった浅薄な官僚悪玉論で指弾するのではなく、代案を出すべきだ。このため、寄付金で支える本格的シンクタンクを確立してこれが代案創出を担うという方法が考えられる。(p280~要旨)
メディア報道は、大手マスコミも市民メディアも「政府を監視・批判する」という使命感が骨化しすぎて政府のやることは全て否定すると言う「非々」のスタンスになる一方、政府側広報は是々の立場だから、両者の発する情報がかみ合わない。双方の視座を併せ持った「是々非々」の情報発信に努めたいとする著者の今後の活躍に期待したい。
「非々に傾き過ぎて、「この政権もダメ、はい次!」をエンドレスに繰り返すだけでは、いつまで経っても日本社会は前進できないよ、と思うのだ。(略)政治に対し必要以上に無力感を持つことなく、少しでも前進できたこと、自分たちが勝ち取ることができた一歩を、しっかりと認識し評価することも、大切だ。
怒ったり嘆いたりするだけの否定論理からは、何も生まれないのだから。
- 作者: 下村健一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/03/13
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