レ・ミゼラブルは読まれざる名作だという。私も中学の時に旺文社文庫の縮約版で読んで、フランス革命といった社会情勢などについての詳細な記述が省略されていることは知っていたけれど、それで可とし、読んだ気になっている。
本書は、230の挿絵に内容の要約を添えたうえで、挿絵とストーリーの結合から生まれる何かを通して、19世紀前半のフランス社会を読み取ろうとしたもの(あとがき)で、まさに縮約版で省略された部分を埋め、解説してくれるものだ。多数の挿絵から、ユゴーは「レ・ミゼラブル(惨めな人々)」で、単に貧困によってしいたげられた弱者ばかりでなく、貧困が生みだすあらゆる悪を、被害者も加害者もひっくるめた形で描き出すつもりだったのではないかということが初めて理解できたという。
レ・ミゼラブルは、映画やミュージカルも面白いが、その面白さは半分でしかない。
- 作者: 鹿島茂
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 文庫
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