堀江敏幸のエッセイといえば、回送電車シリーズがあるが、本書がそれに位置づけられていないのは、短い独立したエッセイを集めたものでありながら、正弦曲線というコンセプトでくくられているためということだろうか。
日々を生きるとは、体内のどこかに埋め込まれたオシロスコープで、つねにこの波形を調べることではないだろうか。なにをやっても一定の振幅で収まってしまうのをふがいなく思わず、むしろその窮屈さに可能性を見いだし、夢想をゆだねてみること。正弦曲線とは、つまり、優雅な袋小路なのだ。(優雅な袋小路ー正弦曲線としての生)
冒頭のこのエッセイは、最後のエッセイ「そこに昆蟲の涙を」のラストと響き合う。
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: 文庫
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